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作品 - 20161112_959_9262p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


イシノトウ

  西木修

犬の小便がかかった
草叢と薄汚れた雑誌の束
僕はそれを睨みながら
今日、川を渡る


対岸には
三人の地蔵たちが
川原に鎮座しながら
石を積み上げている
一つ、二つ、三つ
僕はそれを睨みながら
真似をして
石を積み上げてみる

一つ
僕の悪意
二つ
僕の惰性
三つ
僕の嘘

三つを積み上げてしまうと
地蔵たちが
ケラケラと笑う
僕はそれをやはり睨みながら
立ち上がり、
石塔を蹴って、崩してしまう

石たちが転がって
がらん、と音を立て
地蔵たちはワッと驚き、
僕は少し悪びれる
もう一つの石とは
僕の憤怒のことだ

塔は、いつか崩れる。
いくら積み上げても、
中空を刺し貫き、
僕等が100年生きたって
塔は、いつか崩れ去る
一吹きの熱風、
一筋、曇天から覗く黄色い肌、
脱ぎ捨てられた、
穴の空いたダンボール、

僕は
いつまでも
崩れた石の山積みを
見つめている
紅いよだれかけが
震えるように靡いたら

四つ目の石を積んだ地蔵が、
どうしようもなく
泣き出した。

文学極道

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