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作品 - 20161027_037_9209p

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小さき者へ

  zero

生まれたばかりの君は聖なる皮膚に包まれていた。今君は聖なる皮膚を脱ぎ捨てて、聖なる脈動となりほとばしり、聖なる瞳となって散っていった。祝祭の鐘は鳴りやまず、君の存在は歴史に深く刻まれた。君はもういない、だが君の祝祭は果てることなく執行され続ける。

慟哭する心臓たち。どこまでも降りていく螺旋に沿って、次第に密度を増していく氷河の底に宿る小さな火。君は既に描かれ拡げられ接続されている。君を幹として枝葉は広がり、根は深く張って水音が鮮やかだ。君は慟哭され、慟哭する、存在を賭けた慟哭の末に果てていく。

誰かが君の名を呼んでいる。君は既にすべての人たちと名を交換し合った。君の名は君をめぐる物語の証拠であり、君に捧げられた親しいまなざしの痕跡である。君の生きた豊穣な時間を指し示すしるしとして、君の名は海に至るまでどこまでも受け継がれていく。

君の流した血は私の血である。君の失った命は私の命である。君が葬られるとき、葬る私も葬られている。初めから決まっていたことなのだが、君は私なのだ。君を喪うとき、私も私を喪う。そうしてすべてが抜き取られた後で、私は脱け殻を生きる、君の名が大きく瞬くその時刻まで。

文学極道

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