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作品 - 20160915_873_9103p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


加筆修正と読者と海より広い本屋のために

  泥棒




狭い海

職員室みたいな街で
君と僕は出会ったのさ
廊下に流れている川
そこで
君は魚になって
僕は岩になって
みんなは鳥になって
もう誰もいない
教室は
博物館と同じだね
案の定
君と僕には終わりがない



毒にも薬にもならない。

情緒を殺害、して
血まみれになる、夕方、
俺には
何の達成感も、ない。
太陽が
まるで正論のように、沈み、
雲は
やけに散文的な雨、を、
釘のように降らす
打ちつけられ、て、
毒にも薬にもならない。
終わった発想、で、
お前ら全員
何を奏でる、のか、
俺は静かな草になる。
遠慮はいらない
踏み、潰してくれないか、
新しい花
そうさ
お前らのため、に、



メンヘラバスターズ!

りゃお!
頭ポンポンからの誹謗中傷
この落差、
この落差で
メンヘラどもをやっつけちょる
わし、
メンヘラバスターズのリーダーやっちょるんよ
趣味は山登りっちゃ
りゃお!
今日も明日も明後日も
メンヘラども
情け容赦なく叩き潰すっちゃね。
じゃのに
最後は仲良おなっちまう
にゃぜか
必ず最後は仲良おなっちまうんよ
じゃから
わし、
リーダー失格
そんじぇ
今、
メンヘラとつき合っとるっちゃね
彼女の手首
その傷を褒め殺す
りゃお!
頭ポンポンして
しゃらに
頭ポンポンポンして
しゃらにしゃらに
頭ポンポンポンポンポンポンポンして
ほっこり
いや、
もっこりしているっちゃね
わし、
このまま
じぇっとバカでいたいっちゃ
彼女のために
誰よりもバカでいたいっちゃね
そんじぇ
休日
山の頂上で
孤独をうたうんよ



論外

真実などない
明日
草の上で
戦争がはじまる頃
君の思想が
通用しなくなる
他人の思想と入れかわる
そのくり返し
いつか
戦場に花が咲く
誰も死なない戦争をしよう



リコピン

こんにちは、
お元気ですか?
僕は
光速で
情報に轢かれながら
死んでいます。
朝のひかりで
リコピンを摂取しながら
ひとり死んでいます。
線路沿いの花が睨んでいる午後
その殺伐とした美しさで
巨大な妄想を
ちぎれるまで咲かせている
美しいのは認めるから
はやく散れ、
君も
なるべくはやく散って
死んだ方がいいよ
こんにちは、
お元気ですか?
トマトジュースを
半分ください、



何を見ても何も見た気がしない

優しさで汚された街が人をのみ込む午後。次から
次へとみんな高い場所へ消えていく。君が今まで
集めてきた言葉や数字が砕け散る日も近い。きれ
いな名前をつけられて少しづつ汚されていく夜。
個性的な景観が無機質になる瞬間を見た。この街
のどこかで野蛮な題名の音楽会が開かれている。
正しい手錠の使い方を知らないから。もう朝が近
いのさ。僕の知らないところで光が生まれている
らしい。何を見ても何も見た気がしない。闇を闇
で語る君が光を信じるようになるまで僕はきれい
だ。昨夜の出来事が加筆修正されて朝がくる。海
へ行こうか。ひろい海。そこで何を見ようか。最
初に見た印象とは違う世界。今日だけは加筆修正
を誰にもさせない。終わりのはじまりを見るよ。
拾った海で新しい街をつくるのさ。それが世界。



全員詩人

登場人物が全員詩人の映画があったなら
それは間違いなくコメディ映画である。
内容はどうでもコメディとして見なければならない。
どんな事件が起きようがサスペンスにはならない。
なってはいけない。
そしてハートフルなヒューマン映画にだけはならないように
監督には注意してもらいたい。
いや
監督も詩人だったなら観客も全員詩人でなければならない。
これは問題だ。
やはり詩人は少ない方がいい。



毒針

咲いている花の中でも
一番咲いている
死んでいる人の中でも
一番死んでいる
夏の終わりに
ボードレールの本が
逆さまに
本棚にあるのを見た
僕は
この本屋には
このひろい本屋には
もう二度と来れないだろう
夢の中で
夢の中の本屋で
理想的な背表紙の並びを見て
毒針が
時計みたいに規則正しく
胸を刺してゆく
真夜中

文学極道

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