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作品 - 20160903_262_9072p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


キャンディ

  ゼッケン

さっき買ったツナのおにぎりを
おれはコンビニの棚に戻し、隣に並んでいたおかかのおにぎりに替えた
レジの店員がおれを呼び止めた
おにぎりは全品100円のはずで
カネはすでに支払っていたし、同じ値段のものを交換しただけだ
万引きではない、店員はいったん
払い戻してから改めておかかのおにぎりをレジに通すと言った
何が売れて何が売れなかったのか
バーコードを機械に読み込ませる必要がある
おれは面倒くさかったのではない、店員に手間をかけさせたくなかったのだ
40後半にさしかかって、おれは働いたことがなかった、親が土地を売って金を残してくれたのだ

恥じていた。

金のために働きたくないおれが
金のために働くコンビニ店員に
手間をかけさせたくない
と思ったのは独善でしかなかったということだろう

だが、おれは
怒りをおさえられない、ツナとおかか、
ふたつの違いは
おれと店員
働かないおれと働いている店員の違い
より重要だというのだ
おれと店員が入れ替わってもフランチャイズは気にしない
しかし、ツナとおかかは入れ替わるたびにおれか店員かのどちらかが
バーコードを読まねばならない

店員がおれを見ている

おれは店員を見ることができず、視線を落としたまま、一歩
レジに向かって踏み出した
おれはおかかをカウンターに差し出そうとした、そして店員は言った
私たちが管理しているのは商品ではありません
さっきまでツナを食べたかったお客様がふと、おかかを食べたくなった
その気持ちを
大事に
記録させてもらっています
ピ!
店員はバーコードを読み取ったおかかのおにぎりをおれに渡した

管理こそ、愛

おれは働くことになるだろう

文学極道

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