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作品 - 20160829_922_9057p

  • [優]  神学 - Kolya  (2016-08)

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神学

  Kolya

神様に全部返すつもりだった。僕が持ちうる世界のすべてを。だから紙飛行機を折ったし、賛美歌もつくった。ほら、あそこに見える、遊園地の廃墟は、神殿のつもりだった。たくさんの精霊が凍ったままの表情で暗がりにたっている。いずれ宝石になる虫たちが、光のない街灯に群れている。電車はいつまでも走り続けるし、線路は果てない。それなのに誰も乗っていない。デパートのマネキンたちは、紳士服売り場と、婦人服の売り場の、中間の踊り場で待ち合わせして、つぎつぎとサマーソルトでフェンスを越えていく。つま先が月を擦って弧を描く。人びとはみんな記憶になって、閲歴だけが透明になって、ウィンドウショッピングしていた。どこかで笑い声がきこえた。振り向くと、たくさんの子どもたちが、僕の身体をすり抜けていった。

言葉はだんだん空に盗られていった。もうすぐ僕も何も言えなくなり。何も聞こえなくなるだろう。そうすれば、きっと全部奪われ、僕は動物になり、どこまでも駆けていけるだろうから。その時が来るのはいつだろうか。世界が滅んだのに、雪が降るなんておかしな話だ。いくつかの透明人間たちがそれを見上げる。そして、すこし手をかざしたあと、またどこかに向かう。マンションからはTVの音が聴こえる。言葉がもうすくないので日がな波音を放送している。

駅前からもってきた自転車に乗る。下り坂を全速力で漕ぐ。ペダルが空転して、ああ苦しい、僕は笑う。賛美歌は口笛にしたんだ。そしたら鳥になっても歌えるからね。

文学極道

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