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作品 - 20160813_310_9033p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


(無題)

  匿名

僕はスキージャンプをしていた。大会だった。
坂のてっぺんから勢いよく下り、反り返ったジャンプ台を目前に緊張感が走った。
飛んだ。
風を薙ぐスキーボードと僕の身体が非常に鋭利に思えた。
着地だ。
着地した瞬間、僕の世界が輝いた。物理的にだ。
瞬間、誰かが言った。
「りんごと子供用のビールもどきだ!あれはいつも子供を馬鹿にする大人の仕業に違いない!」
僕は意識を失った。
目が覚めると見知らぬ光景が辺りに広がっていた。
僕は崖の上に立ち、下界を見下ろしていた。
世界には雪が降り積もり、下界には小さな木造の小屋と、藍色の海が有った。
僕は小屋に行かなければならない気がして、この断崖絶壁を下る決断をした。
命綱などない、正真正銘の命懸けだ。なんてダジャレを言いながら。
足場らしい足場もないのに、僕は苦なく崖を下っていく事が出来ていた。
不思議だ。
崖を下る途中に白い髭を長く伸ばした仙人の様な人と会った。
彼は小石としか思えないところに、つま先立ちで立っていた。
彼は笑いながら何かを話しかけていたが、僕はそれを覚えていない。
気が付いたら彼は居なくなっていた。崖も、下りきっていた。
小屋が目の前にあったので、入ろうとした。
だが、扉が開かず入る事ができなかったのだ。
そこでふと、僕はスキージャンプをしていた事を思い出した。
元いた場所に帰りたくなったのだ。
仕方が無いので海を歩く事にした。
崖沿いに海の中を歩き、向こう側に見える岸へと歩こうとしたのだ。
最初は膝までの水深だった。
段々と水かさが増えてきた。
腰までになった。
どれけだ歩いても向こう岸に届く気がしない。
崖沿いに歩いているのだから、道を間違える筈が無いのに。
振り向いてはダメな気がした。
気付いたら水かさは鼻の上まで上がっていた。
呼吸ができない。
死ぬのだ。
何故帰りたいのかと声が聞こえた。
「愛しているから」
そう答えた。
気が付くと僕はスキー場にいた
誰かが言った。
「りんごと、子供用のビールもどきだ!あれはいつも子供を馬鹿にする大人の仕業に違いない!」

文学極道

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