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作品 - 20160808_136_9015p

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亡命者

  湯煙


幼児への誘拐と殺害の容疑だという。
星々をつなぎとめ星座をかたちづくる。崇高というのでないが、
信念と倫理とが発動され、瞬きは忙しく、瞼を微細な痛みが貫く。
愁いの夕空から蝙蝠たちを展開させるための試行が様々に召喚するようだ。
私は尊厳とよばれるものをかけて被告席から歩きだし証言台に向かう。
黒衣を纏う無表情のものたちを前にして死刑宣告を受ける。
そのとき私はどのように逝くべきか。ことばを吐くのか。聴きたいか。
いったい誰が判断を下し線引きは行われているのか。
誰が許可するのか。金銭の取り引きによる和解はあり得るのか。
私は蝙蝠たちの飛翔に眼を凝らす。
確実に侵食し追いつめるものたちの姿を探りたい。
私は無実であり再審を請求する。黙秘ではなく潔白を証すために。
厳格を珍重し求め、非情なまでに他を排する、永い歴史の中で培った思想。
王を定め位を定め、神へ奉納する国、川という川を越え下らねばならない。
新月の夜に私は走り出す。


漁を営む海辺の町だ。
小島の片隅にあり、年中温暖な気候を保つ。
乾いた潮風が島内をめぐりながら日光を受け、翼を広げている。
自然であることを謳歌している。
まだ軽い痺れを残す身を浜辺に横たえうつらうつらしていると、
屈強な背広姿をした中年男の二人が近づき、
寝そべる私の両脇へと腕を差し込んで抱え起こそうとした。
私は冷静に理由を話すよう乞うたが、
男達は答えを返さず私をぐいぐいと引っ張っていこうとするだけだった。
そばに置いていた、所々にじわと赤黒い斑点を滲ませる、
袖と襟元が弛んで垂れ下がるみすぼらしい上着に腕を伸ばしつかみとると、
私は何も言わずおとなしく連行されていった。
幼い頃から通いつめ慣れ親しんでいる駄菓子屋で買い込んでいた、
表面全体がまだ淡く原色の鮮やかさを僅かにとどめる色とりどりの金平糖。
その数粒が、正午を過ぎたばかりの陽の中へこぼれおちるのを見た。

文学極道

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