雨になりそうな空模様だった
学校へ行く途中、橋を渡っていたら
突然強い風が吹きつけて
顔から眼鏡が飛んで川に落ちた
音を立てて雨が降ってきた
漫画みたいだね
友だちは笑い
先生も笑い
母は笑い事じゃないけれどと笑った
視力0.1もないからね
眼鏡がないと本当困っちゃうんだけれど
僕も笑った
眼鏡でよかったじゃないか
公園の遊具が飛ばされたことだってあったし
グラウンドのテントや
サッカーゴールだって
家の屋根や
電柱だってあり得たんだから
と帰宅した父が言った
、確かにね
ベッドに入ろうとしたら
再び突風が吹いた
枕も
脱ぎ捨てた服も
マンガ本も教科書も
DSのソフトも本体も
バラバラ、バラに飛び回り
しまいにはベッドまで飛ばされる?
僕は頭まで布団を被った
またどしゃ降りの、雨が降ってきた
雨は降って僕の部屋を立方体に埋め
底に沈んだベッドの上で
固くくるまった布団の下から伸ばした右手を開くと
二つに折れた眼鏡がゆらゆらと
ゆらゆらと、昇っていった
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選出作品
作品 - 20160711_687_8949p
- [佳] 突風 - 鮎 (2016-07)
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突風
鮎