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作品 - 20160706_526_8941p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


態度の悪い少女

  蛾兆ボルカ

朝、電車に乗って降りると
ギッシリ混んでるホームで、
態度の悪い高校生の少女が、
ドン。とぶつかってきた

白のブラウスにチェックのミニスカの制服を着て
栗色の髪にイヤホンをして
決然と
スマホからは目を放さずに

不快そうな顔をして
右に左に大きく揺れながら

そうやって少女は
ぶーたれて歩く

混みすぎて、みんなで一匹のアメーバになったみたいに
全員が同じ歩速で階段をノロノロあがっていくのだから
私も少女も他のひとも
どうにもよけようもなく
少女が一足歩くたびに、肩がドン
とぶつかってくる

実をいうと
ぶつかっても
少女だから柔らかくて
ドンというより、ポヨン、という感じだ

しかも体重が軽いので
体重二倍程度の私には、ほんとは全然、衝撃はなくて
トンとかチョンとかいう感じだ

でも少女にしたら、ドン!のつもりなのだから
私もドンなんかされて、ムッとする
それが現役ってことなのだ
(もし私が少女を睨み付け、その胸ぐらを片手で掴んで彼女の足が浮かぶまで高くねじりあげて怒鳴り付けたら、なお良いのだが。仕事に遅刻するけど。)

階段を上りきって少女は改札に向かい
私は乗り換えホームへと降りていく

あの娘はああやって
ゴムまりみたいにポヨンと
ぶーたれて生きていくのだろう

もし叱ったら(現実にはもちろん優しく)、
または激怒したら(しないけど)、
あの娘は私に謝るだろうか

謝らないで欲しいな
ほんとうに謝らないで欲しい
ぜったいに

君でポエムしてごめんね
などと
思ってみたりする頃、
(何一つ私のせいじゃないが)
私が毎朝参加するアメーバは
ずるずると在来線に乗り換えて
満員電車の扉が背後で閉まる

いつもの小さな駅についたら
バスに乗り換えて
朝日の照らす山道を
ゴトゴト職場に向かうのだ


謝るな、俺
と、私は思う
どうせ私は
今日も五回は謝るだろう
今年千回は謝るのだろう

それでも



(初稿初出:メビウスリング:2014/09/26)

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