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作品 - 20160628_172_8914p

  • [佳]  郊外 - 田中恭平  (2016-06)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


郊外

  田中恭平


 
いつかとうめいの中を飛んでいた鳥は
兜をかぶって鳥兜として咲いていた
鳥兜は水葬した された
わたし わたしらで
下流の方にこの川を生活水として利用される
民家のあることは知っていた 知らなかった

くらしは暗くとも静謐な生活
ふさわしいくらし 休日の為私は親族を何人殺し
その休日は壊れていく体に必要な休日で
殺した数にして神経の神は一向にベッドから出れずやむなし

賢治の「やまなし」読みかえし
ユングが意識混濁より眼を開いたとき抱いた
この世界にまた存在する哀しみ
その深さの底へ

───クラムポンはかぷかぷわらったよ

薪割り
薪割り
ときどき向日葵
薪割り
薪割り
いただいた御茶がおいしくほほえむ
夏蝶が瞼を重くしたが
御茶のカフェインがかるくしてちょうどよくなり
薪割り
薪割り
くりかえし
からくりのようにくりかえし
あっ! 町内会の連絡網まわしてなかった

カアサン、ついに秋山さんとこの爺がアブサンに手を出して無茶してるって
狼煙上げとけって電話あったよ

ああ、そう、あそこらは女衆が足らないから今から行ってくるね
あー、腕がなるわ!



夜は勝手に肌へ接触をはかる湿気にくらべ
堂々としているからクールだった
わたしは、わたしの一日が二十四時間より長いことをわかっている

「僕の薬箱」は服薬中断を告げられ飲まなくなった錠剤でいっぱい
時間が有限なのか知らないけれど
明けない夜が、デスクの二段目にある


狼煙が上がっている 
この郊外の中心を通る大きな車道のインサイド、アウトサイドから
犬が吠える 
犬が吠える

ここに唯一明るい
コンビニのバックヤードで
深夜勤務労働者がじっとスマートフォンをめくる
わたしは彼の友達らしかったが 
わたしは彼にとってのお客様である


ガラケーからショート・メッセージを送る
「トリカブトの写真とってあるけど送る?」
「キツ でも送って」

「やっぱいいや 検索ですぐ見れる」
「はいよ じゃあ朝の六時までファイトっす」
「うす」
「今から行こうか?」
「うーん さびしい、かなぁ〜」


わたしは夜の底を歩いていく いつまでも 
いつまでも
いつまで ───クラムポンは
かぷかぷわらったよ 

文学極道

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