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作品 - 20160614_549_8887p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


Gloom3.4

  5or6

陰欝な歌に女がティッシュを配る
幸福が侵食して言いなりの地下街
僕と俺を忘れた台無しの私
六弦が二度下がった音が出勤を告げる
携帯が肩にのしかかり
同伴無理の言葉が胃を軋ませる
そんな
こめかみを揉む記憶。

かつての落書きした柱も炭になり
ションベンの匂いのした黄金も溶
けて地下街へと流れていった。信
頼のおける部下は私のスカウトし
たAランクの女性を寝取り、電話
ごしにマヌケと一言告げて夜逃げ
をした。怒り狂った私は店のソフ
ァーを蹴り、隣にいた同僚の袖を
引きちぎり、どうして黙っていた
のだと何度も頬にビンタをした。

女性の名前を借りた台風は
全てを奪って北に行ってしまった
同じ時期に入った同僚は
酒と薬の渦にのみこまれていった
私はただ眺めるまま
煌びやかな日々に掃除をしていた
私はただ生きたかった。


腫れ上がった頬の男は訴える事も
できないまま、同室の部屋から一
冊のノートを見つけ、私に渡すと
翌日の昼間のスカウト中に逃亡し
た。営業中、事務所の中で表紙を
捲ると、彼女の詩が書いてあった

「金星」

箱の中で絡み合う胎児のように
私たちの管は
私たちの管は
透明なプラスチックのケースに
無知な木漏れ日があったよ
空 は 鈍い 音
骨盤が寒くて
寒くて
ゆっくりと太陽が昇る坂を
下った

スカウトした時を思い本を閉じて
寝取った男を捕まえた男に札を渡して
部屋の鍵を閉めた
外の音は
聞こえず
ただにぶい音が
響いた。

⑷

ひんやりとした影たちを
子供たちがつねる
取り壊す予定の滑り台に
小鳥たちが糞を落とす
リサイクルされる
転調は朝だった
残されたものは薄暗く
未来の都民に嬲られる
そんな
都民が取り壊す滑り台に
小鳥たちは羽を落とす
流氷にまみれたスコップのようだ
小鳥たちは
スコップのようだ
飛べよ
上昇する小鳥の視線から
後に追う
羽ばたきの音と
週末。

オレオレ詐欺を営んだ競売住宅で
お爺さんとお婆さんは縁側でお茶を啜る
英国の新聞紙で折られた星を飾って
花束の代わりに
二、三のパスタを花瓶に挿す
なんて実際に見たような事を

笑いあって
微笑んで
さめざめと互いを見つめて
長い長いお暇を頂く。

共に落ちる
あなたと共に
太陽が昇り
共に落ちる
あなたを見つけて
共に落ちる
太陽の下
共に落ちる
あなたを見つけて
共に落ちる
繰り返し

オールバックで背の高い男が
高そうなブランド物のバックで
ひったくりの鼻をひしゃげている
ひしゃひしゃひしゃげていく鼻
ぷしゅるぁぷしゅるぁぷしゅるぁ
血飛沫は揺籠にゆられる赤ん坊のよう
に右左と揺れて前のめりになって
ひったくりは
突っ伏した
老夫婦はさめざめと流れる赤い血を見つめて
二人同時に
オールバックで背の高い男に向かって
一礼をした。

赤い炎
金属音
擦る音
親指

パーラメント
光、

二丁目の公園
もうすぐ撤去ですって
おかまバーで働くママは呟き
英国の新聞紙で星を折っている
オールバックで背の高い男は
欠伸を押し殺すママを見て
黙ったまま金を置き
朝靄の公園を歩いていく
夜の子供達が走っていく
小鳥達が羽ばたいていく
純粋で無垢で美しい朝に
貴様達は転校する気持ちに浸る
眠れ
リサイクルされた
すべてのひんやりとした
影と
影と
ひしゃげた影達。

文学極道

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