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作品 - 20160514_757_8823p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


右足の痛み

  宮永


道端で、小さな石につまずいた
それだけで
僕は前に進めない
なぜ他の誰でもない僕が
転がっているたくさんの石の中で今、
ここで、この小石に
つまずかなくてはならなかったのか
何気なく踏み出した右足、この右の足で

偶然という言葉に包んで
噛んでいたガムのように捨てられるべき疑問符が
靴の裏に貼り付いて
他の小石や枯れ草までひっからめ
ベタベタとべたべたと
僕は自己否定のかたまりとなり
生きる意味までわからなくなる
こんなとき
なめらかな低い声音で
君は生まれながらに罪深いのだと
罪は苦しみにより贖わねばならぬのだと
だから生きることは苦しいのだと
誰かが断じてくれたなら
僕は何もかも道端に放り出して、軽々と
軽々と彼について行こう
けれど誰かを待つ間にも
右足が病めるからと医者にかかる

青黒い沼に浮かべた白骨を光源にかざし
その白い光を背に僕の前に立ち
捻挫している、捻挫なのだ、と
ペテンにかける悪魔のように
医師が告げるから
なるほど、と
だから痛かったのだと納得し
包帯を厚く巻かれ
湿布と痛み止めの錠剤をたくさん処方され
土産をもらったみたいに嬉しくなって
嬉しくて、足ばかりでなく
全てが回復に向かっている気がしている

僕にだってわかっている
なぜをつきつめてはいけないと
不可知の海につま先を浸けてはいけないと
正解があると思えば安心できるから
歩くなら因果の轍を歩きたい
生きている意味がわからないのは
生きている意味が欲しいのに
どこにも見つからないからで
せめてどこかにあるんだと
嘘でも請け合ってくれないか

いつの間に時がたったのか、気がつくと
知っているようで知らない場所に立っていた
透明な水が寄せる波打ち際で
足の下だけ残して砂が引いて行くように
僕は立ち止まっている

文学極道

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