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作品 - 20160513_734_8821p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


暗い桜は錯乱し咲く裂く昨夜未明っ明るい桜が散る春の歌

  泥棒




「こじらせて、春。」

あの人は
常日頃から
異世界で生きていたような人だから
風に耳をすませては
あらゆる種類の
出会いや
色彩や香りとか
今も感じながら
どこかで生きているのかもね
いや、
生きている。
そう、
世界にあふれる
誰かの言葉を引用して
それが栄養になって
また来年も
桜が咲いてしまうから
もう今年で
終わりにしよう
本当は誰も見ていないんだ
10月頃の桜の樹
それと同じだよ
僕の理想が崩れる時
その時
その音は
桜が散るより
繊細な音であってほしい
誰が耳をすませても
聞こえないくらい
僕は
何の栄養にもなりたくないよ
目を閉じても
一切
何も浮かばない情景。
そう、
優しい言葉が
いつも僕を傷つけてきた
確実に
僕の中心を傷つけてきたんだよ
ほら、
優しい言葉から順番に
死んで栄養になっていくなら
僕は
いつまでも死なないよ
来年も桜を見て
他人事のように崩れる様を
僕自身に重ねて
きっと
いつかは死ぬのだろうけれど
春。
こじらせて、
僕は中心から死んでいく



「ちんぽ大爆発」

綾子ちゃん離婚したんだって。先週の火曜日。そ、夜遅くに電話あっ
て。綾子ちゃん、泣きながら(旦那とはもう終わりって、めっさ泣きな
がら電話あって。でね、とりあえずファミレスへ行ったの。綾子ちゃ
んに呼ばれてさ、朝までずっと話し聞いてたの。別れた理由。ま、そ
りゃね、夫婦の間にはさ、ま、そりゃね、いろいろあるでしょ。原因
はさ、ひとつじゃないみたいだし。そ、綾子ちゃんもさ、自分にも悪
いところはあったって、そう言ってたけどさ。ま、とにかくさ、私は
聞き役。朝までずっと話し聞いていたの。でね、どうやら、旦那。仕
事辞めてさ、またバンドやるんだって。バンド。しかも激しい系?私
さ、音楽とかよくわかんないけど、パンクとか、そういうのやるみた
いよ。でもさ、旦那、38でしょ?38だったよね?確か。バンドや
るのは別にいいんだけどさ、仕事辞めてまでするか?しかも38でパ
ンクはないだろパンクは。もっと、こうさ、静かなのやれよって。ア
ンビエントなさ。ちゃんと仕事やりながらさ。え?いやいや、もちろ
ん、そんな余計なこと、綾子ちゃんには言ってないよ。私はとにかく
黙って聞き役。うんうんって。朝まで頷いていただけ。基本、私は喋
ってなくてさ。でさ、綾子ちゃんもさ、いっぱい喋っていっぱい泣い
て、だんだんおちついてきてさ、(今度またみんなでのもうよって、ち
ょっとだけ笑顔になったからさ、朝7時頃にファミレス出て、ほら、
駅の向こう側の土手、桜満開じゃん?今。でね、綾子ちゃんと二人で
コンビニで缶ビール買ってさ、花見したの。平日の昼間っから。アラ
サー二人。もうさ、バカな女子大生ですよ。気分だけは女子大生です
よ。でね、ところで旦那のバンド、どんなバンド名なの?って聞いた
らさ、綾子ちゃん、めっさ小さい声で、

(ち、ちんぽ大爆発、

って。そう言ったの。私さ、(おいおい、お前の旦那マジかよ!って、
全力でツッコんだのね。めっさ大声で。満開の桜の木の下で。ほら、
夜から朝まで、私さ、ずっと黙ってたから、自分でもびっくりする
くらいの大声がでてさ。そしたらさ、桜、すこし散ったよね。私の
声で。いや、本当だって、この話し、盛ってないからね、

文学極道

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