記憶喪失者にも郷愁があった
高い場所から街頭の光がアスファルトを照らしていた
まっすぐに続く夜を歩いて、おれは帰ろうとしていたのだった
輪郭を見定めろ、とおれは路面に向かって吐き捨てたが
路面に貼りついた鴉の艶めいた羽におれ自身の困難が反射する
おれは家族が全員出て行った家を目指していた
おれは足元のアスファルトを疑えなかった
そこにはおれに取り返せるものはなにひとつない
記憶は
出来事では
ない
むかしむかし、
そういうふうに声に出して本を
読んだことがある
むかしむかし、
水たまりの水面から星を掬う
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選出作品
作品 - 20160416_954_8762p
- [佳] 木工制作 - ゼッケン (2016-04)
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