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作品 - 20160405_741_8739p

  • [優]   - 玄こう  (2016-04)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


  玄こう



『お先にー、お疲れ。』、仕事場をあとにする。着替え室で『ズボン』と言ってズボンをはく。『靴下』と言って靴下をはき替える。建屋を出たら外は心地よい風が吹いていたので、ふいに、『風』と声に発した。
冬の吹く風が暖みをましていた。春の到来を告げてくれている。空気の流れを頬に掠めたとき、思わず『風』と発した言葉について歩きながら思い返した。歩きながら少し不思議な気持ちになり考えていた。風という一語を声にした風は、
ひとつの同じ風。
、ふたつは違う風
ふたつは同じ風。
、ひとつの違う風



**

かかとの鳴るブーツが身軽に角を曲がります

ほとほとと花と水とが匂いたつ行路を夜過ぎ

石垣に並んだパイプの口から漏らした水の先

グランドピアノ脇に写る譜面が二つに割れる

トラデルシアトラヴィシア南から吹く風釦釦


***

よろよろよろめいてよろよろと座り込む手にとる一輪の野の花も 土につまずく小さく転がる紫露草の葉がフラワーフープを幾重にも腰に巻きつけ車輪のように浮かせている 花は思わずよろめく手向けた花弁の襞のもうひとつ奥のリム 坎から芯髄を覗かせている 

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山むこうに山がありむこうにもまた山がある

道の先には道がありその先にもまた道がある

花のなかに花がありなかにもひとつ花がある

君の奥には奥があり奥の奥にもまだ君がいる

私を知らない人を知る人を知らない私を知る

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文学極道

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