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作品 - 20160311_138_8679p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


緑色の蠍

  黒髪

緑色の蠍がはさみをちょきちょきと動かしている
どこへ行くのかな
何を考えているのだろう

蠍はきっと音に耳を傾けているのかもしれない
蠍にだけ聞こえる特別な太鼓の音に
そして消えていくのだろう
全ての命がしたがう法則のとおり

後悔は何にだってあるから
緑の苔もむせかえるように
蠍は私の知らないところへ行く
蠍は私の知らないところへ行く

声が途切れる所、川の中へ落ち流れていく
緑色の蠍
私だけに聞こえない太鼓
お祭りの行列の最後尾から
声に合わせて叩き続けた
忘れてしまったのか
叩けなかったのか
もう聞くことができないんだあの太鼓の音は
もう二度と
闇夜の中に聞こえるのは
透明な空中にピンで張り付けられた音だけ
虫の鳴く音だけ
さらさらと花粉がなる音だけ

フラリフラリとさせるような
はさみにはさまれた私の克明な意志
見つけたよ強さと優しさを
ありがとう私の緑色の蠍
またねいつでも会えるね
死を乗り越える試練課せられた夜の使者
永遠に守る物をとうとう見つけられたんだね

文学極道

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