世界中の海から集められた
追いきれない広さと迫りきれない深さ
あるいは群れをなす魚の一匹が発した
どこまでも届く一瞬の輝き
そういうものが
個人のはるか遠くまで開け放たれた
借り物の一室に湿り気を届ける
それが絶望だ
絶望は一つの生命を持ち
個人の生命と交信して渦を分かち合う
絶望から贈られる湿った渦の構造は
極めて難解で飛散していて
個人の人格はそれを収集し解明するために
どこまでも低い沙漠へとさかのぼっていく
絶望はとても明るい海の光
そして人をとても暑い沙漠へと連れていく
その明るさがまぶしくて
その暑さに膨大な汗をかき
個人は雨の日の電柱のように
大きく背を伸ばしては
物思いと覚醒を繰り返す
開け放たれたドアから
誰からともしれない手紙が届くのを待ち続ける
その手紙には一言
また会おうね、と書いてある
最新情報
選出作品
作品 - 20160222_816_8641p
- [優] 絶望 - zero (2016-02)
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絶望
zero