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作品 - 20151214_667_8502p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


続・地図に無い町

  紅茶猫

『シリアルナンバー8386 逃亡』
その日
僕の腕時計に
こんな文字列が踊っていた

あいつか
すぐにピンときた

僕に妙な質問をしてきたあの男だ


それはそうと
注文したミルクティーに
さっきから
蝿が浮いている

僕はボーイを呼びつけて
声高に文句を言ってやった

もう二度と
こんな店に来るもんか

金は要らない?
当たり前だ



原則逃げた奴は
連れて行った人間が
探し出すことになっている

あいつら食事はどうするんだよ
口も無いのに

あいつは
たしか僕がこの仕事を始めてから
依頼された
6人目の男だったと思う

僕は、
正確に言うと僕らは
あの森のことは何も知らない

ただ人が逃げ出せるような場所じゃないって
雇い主のせむしの男から
何度も聞かされていた


あいつ
8386......。


大体なんで顔を無くしちまったんだ




顔の無い奴を探せばいいんだから
簡単じゃないかって

初めは僕もそう思ったさ

でもこの町には
金さえ払えば
顔を書いてくれる人間がいる

せむしの男も
まだその店の場所を
特定出来ていない

まあそれらしく書いたペイントだから
実際に目や口を動かすことは出来ない

大体あいつ
そんな金を持っているのか



定刻までに探し出さなければ
僕の左目は
消されることになっている

全くあの男
最初見た時から
嫌な予感がしていたよ

こんな商売に手を染めた僕が
馬鹿だった

もしかしてあいつも
この仕事を

いや、そんな訳ない

全く何もかも
馬鹿げているよ

何だよ
少し見えなくなってきた

雨まで降って来やがった



その時だった

すれ違った男の顔が
僅かに雨で流れかけているのを見たのは

こいつだ

誰かこの男を
捕まえてくれ



その時僕には
もう左目が無かった

文学極道

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