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作品 - 20151207_466_8480p

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眼のある風景

  かとり

本をたたんでは、ペンにキャップをつけた。はさみをひらいては、つけねで指のあいだをぐりぐりとした。靴下をつかんでは、投げた。たばこに火をつけた。そしてたばこの火は消される。紫から黄色へ、黄色から青へ、藍そして緑、緑から赤へ、くぐもった、昼下がりのまぶしさの、まぶしさのなかの色彩が、展開していった。きれぎれの眠りがまた、つぎの眠りへと移ろう。落ちる、というよりも引き裂かれるように、誘われ、壁に背をあずける。眠りが、裂かれてできた破け目は、瞳の形をしている。瞳から、小蟹の群が這い出、行列がフロアを渡ろうとしている。

 小高い丘の白い岩場はただ2人のためだけにある。朽ちた鉄柵をくぐり、茂みをかきわけ、摩耗し苔むしたコンクリートブロックを足がかりによじ登り、2人は岩場にやってきて腰を下ろした。半透明の蟹が一匹足を止めてじっと見ている。2人は平らな岩にお菓子の小袋を並べて語らっている。空には一切の雲がなく、見晴るかす彼方は海だ。見晴るかす彼方は海だと、あなたはそう思った。しかし実は、違う。それは水平線ではなく屋根。小さな家々が彼方まで、徹底的に並んでいた。東の空の片隅は昏く、霞の内部には黒い筋が見える。塔?いや、あれは竜巻。天から空が、地上に流入し、とめどなく拡散している。「あっ」と声が上がる。花が現れ、即座に立ち枯れ、丘が暗転し、竜巻は過ぎ去っている。丘には影がひとつ。2人のうちどちらか一方が、がもうひとりを突き落としたのだ、と蟹の眼は証言する。罪深いものが突き落とされ、罪深いものがまた突き落としたのだと。しかし、とあなたはおだやかに否定する。夢はおだやかに否定される。そのつぎの場面では、2人それぞれに微笑しながら腰をあげ、ずぼんを払った。蟹は岩場の陰へと滑りこんだ。あなたはそれ以上の光景を追うことに興味を失い、私は罪悪感をともなって目覚める。起こり得たことの全ては裂け目の闇に突き落とされたのだ。そして、と目覚めた私は続けるだろう。小高い丘の白い岩場はただ2人だけのためにあった。

アラームが鳴る
私は薄目を開ける
少し眠りたかったけど
眠れなくてもかまわなかった
カーテンのない
西向きの窓から落ちた
四辺形の光に
足をひたして
続けて数を数えた
水の音が大きくなり
光に焼かれた踝の
微細な痛みがともる
宙空を上方へくいくいと
移動する埃に
焦点が合わされることについて考えるが
答えは出ない
服を脱ぐ
開き戸を開けると
蒸気が部屋に流れ込み発光する
光には光が
音には音が紛れこむ
私はユニットバスを一瞥する
そして新しい服に着替え
靴を履いたら
たぶんもう
戻ってはこない

文学極道

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