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作品 - 20151203_296_8472p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


郭公の見る夢

  atsuchan69

 朝露に濡れた葉のギザギザ。地表を這うように草木を透かして訪れた地獄の陽を浴び、緑に燦然とかがやく【ヤマソテツ】と呼ばれる羊歯を踏みながら言葉なき森の奥深く、「幸」住むと人のいふ原始の密林を駆け巡る雛の雉が歌う、♪サカ菜/サカ菜ァ、そしてサカ菜という野菜を食べると頭が良くなって僕はパンツを穿き、発条式の両眼をとび出させて啼く山鳩の声を背に猛烈に新聞を配りはじめ、ついでに各家庭にヤクルト400も届けてやる。

 大審問官ラギの秘めた笑みの裏側に零れた微量の涙など知らない、派手な猫革のジャンプスーツを着た宇宙人が朝から元気に立ちんぼをやっている。

 「俺と遊ばないかい? 
 「嫌だよー、ベーっ! 

 ゲルダの鐘が鳴り響く午前6時9分。有刺鉄線を張巡らした希望なき地方都市中心街栄町2丁目3の11にもカオスの陽光が射しはじめ、隣家の窓を覗けば「ふーふー、はーはー、ラマーズ式で味噌汁を啜るあこがれのしずかちゃん(w)。するとビビズ・ナ・メコシ谷に住むモモラ人バネット・クレイシーさんが、しゃかしゃかミルバを振って踊る姿がパネルに映り、キャラ弁をつくる若妻たちの深き欲望を隠した微妙な雲はみごとな朝焼けの色に爛れた。

 ビナ、ホエーッと吼え、叫びながら飛び立つピンクフラミンゴモドキの鳥人の群れ。

 ラギ、ゲルダ、そしてビナという【意味】をあまり持たない言葉たちが真っ赤な嘘とミルバの音にあわせてスキップする。そこにボナ、サルヴァンも加わって踊りだす。 )))

 葦の茂る河原にひとり佇むラダン。――半獣半人。
 かつて旧ソヴェト連邦では秘密裏に遺伝子操作した狂犬病ウィルスに侵されたリカントロピー患者による政府公認の仮装舞踏会(x)がさかんに行なわれた。

 眩い紫を帯びた放射光が花弁のように開く大地の底より、七色の風に揺れる僅か5メートルの深紅の蛇の舌‥‥先が二つに割れ、強欲な女神を祀った神殿につづく地獄の消化器官開口部からチョロチョロと出し入れするそのさかんな動作は、ついに磁性軸(y)を一方向に保つことができなくなった電場の揺らぎにも似て放電しつづける地殻内浅部マグマの不混和二相流による重力分離時の熱プラズマさながら、放射光の集まったドーム状のダリアを想わせる女装の美しい男性の姿かたちと相俟って荷電化された郭公の見る夢のようにひどく猥褻に感じられる。

 「逝っちまったよ、チャーリー。
 逝っちまったブンド(ブント)に もはや用はない。

 コードネーム≪ペコ≫。――以上はお前のために暗号を使って書いている。国際的共産主義者の仮面の下で日々タコ焼きをひっくり返すガマ親分。オイこら、毛糸の腹巻に左手を入れやがって、ワレ。紅生姜もっと入れんかい、ワレ。さて、金融資本と共産主義の利害は何等矛盾しないし、ウインドウズとリナックスみたいな「奪うやつ」と「与える側」の不可思議な共存関係や果てしなくつづく角型と丸型のモデルチェンジのくり返しだの賃金抑制策としてのジェンダー思想および男女雇用機会均等法にみられる操る側にとって好都合な仕掛けを甘い白玉イチゴに隠して夫婦共稼ぎ。恋愛、結婚、不倫、破局、再婚のストーリーを順序正しく行なう愚羊の群れに放った牝の狼こそ≪ペコ≫、おまえだ。着用する下着はコサベラの【Never Say Never】のタンガ。色はアイボリーでなければならない。この作戦においては資金はいつも通り自己調達となるが、たとえ非合法であっても手段は問わない。ただし行く前には必ずイソジンで嗽(うがい)すること。僕を被ったべつの僕のわたしは、今しも昨日ふたたび女性となって戻って来たオルランドとメイクラブの最中だが‥‥ペコ、とにかく行ってこい。希望はまったくない。

 w,x,y=肉体こそが唯一の答えだ、≪ペコ≫。

文学極道

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