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作品 - 20151202_256_8469p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


#06 (冒涜)

  田中恭平

 


  郊外から、眺めることのできる「富士の山」も、十月十九日の初冠雪から、かなり積もり
 現在白いペンキを山頂へドバッ、とぶちまけたような、かくたるべし「不二の山」となりました。

 
  冬来たりなば春遠からじ、と言いますね。私はこの言葉を、季感を意味する言葉であると思っていましたが
 「今は不幸であってもいつかは幸せがやってくる」という意味なのですね。
 春も、夏も、秋も、常々冬来たりなば春遠からじ、といいましょうか。
 しかし、あなたの乗車しているであろう汽車は、きっと時間や、空間さえ無視したところへ到達していることでしょう。


  はて、季節、とは、時間軸の中に納まるものではない、のでしょうか?
 地球には、季節が一つしかない国もあるそうですが、それは季節のない国といえそうです。
 私はお金がないものですから、旅行はできません。日本は、ガラパゴスと呼称されていますが、つまりはヒキコモリ日本人で生涯を終えそうです。
 しかし季節のない国について知っても、行かなければわかりっこないですね。
 ヒキコモリではなくむしろ活動的過ぎたあなたが、パラサイトと揶揄される書籍を読みました。
 あなたをダシにして、現代のパラサイトたちを煽りたいのでしょうか。癒したいのでしょうか。
 私はパラサイトとして、少し声を漏らして、笑うことのできた本でした。ほんの一瞬、だけですが。
  人類全体が幸福にならない限り、個人の幸福はありえない
 しかしそもそも
 どこまでもいける切符はたった一枚しかなかったんだ。そうでしょう?


  すいません、嫌味に読めるでしょうか。
 いいや、私はあなたに常、感謝しているのです。
 人にはそれぞれ立場があり、あなたは人を越えて、動物や虫、植物、石にさえそれぞれの主張があることを知っていた。
 そして、わかっていらっしゃった。
 話は飛びますが、次の米国の大統領選で共和党党員から大統領が選ばれたらば、やはり戦争がはじまるのでしょう。
 わたしはわたしの幸福の為に、米国を応援するでしょう。
 そして、米国は、米国の幸福の為に他国を撃つ。
 それでいい、それでいいんだ。人が死んだ、としてあなたは
 その死を死人の幸福の内に、勘定するでしょうか。


 苦々しい独り言も書いてしまおう。唯脳論はどうなった。
 マヤ暦の、あの世界の終わりのカウントダウンは。暦は。世界の終わりは。
 皆、それぞれ、自分の世界しか生きていなくて。同じ「眼球」をもっていないかぎり。
 同じ「脳」をもっていないかぎり。
 等しい「身体」を持っていないかぎり。
 等しい・・・・・・かぎり。等しい・・・・・・かぎり。等しい・・・・・・かぎり。
 等しい世界に生きていないですね。





雲はちぎれてそらをとぶ
お日さまは
そらの遠くで白い火を
あたらしいそらに息つけば
ほの白い肺はちぢまり


まことのことばはうしなわれ
けふはぼくのたましひは疾み
たよりになるのは 
陰気な郵便脚夫のやうに
ほんたうにそんな酵母のふうの
くらかけつづきの雪ばかり



風の中から咳ばらい
あくびをすれば
そらにも悪魔がでて来てひかる
青ぞらは巨きな網の目になった


ほんたうに
けれども妹よ
けふはぼくもあんまりひどいから
二つの耳に二つの手をあて
喪神の森の梢から
ひらめいてとびたつからす
烏さへ正視ができない
あやしい朝の火が燃えてゐます
水の中よりもつと明るく


たしかにせいしんてきの白い火が
水よりたしかにどしどしどしどし燃えてゐます



いかりのにがさまた青さ
唾し はぎしりゆききする
はぎしり燃えてゆききする
立ち止まりたいが立ち止まらない
寒さからだけ来たのではなく
またさびしいためからでもない

電線のオルゴールを聞く
(ひとつの古風な信仰です)



これらなつかしさの擦過は
日は今日は小さな天の銀盤で
朧ろなふぶきですけれど
吹雪も光りだしたので
ひとかけづつきれいにひかりながら
四月の気層のひかりの底を
ああかがやきの四月の底を
そらから雪はしづんでくる


もう青白い春の 禁慾のそら高く掲げられていた さくらは咲いて日にひかり 
さくらが日に光るのはゐなか風だ
黒砂糖のやうな甘つたるい声で唄ってもいい


 まことのことばはここになく
 けらをまとひおれを見る農夫
 ほんとうにおれが見えるのか
 風景はなみだにゆすれ
 修羅のなみだはつちにふる
 ぶりき細工のとんぼが飛び
 雨はぱちぱち鳴ってゐる


いかりのにがさまた青さ
唾し はぎしりゆききする
はぎしり燃えてゆききする
立ち止まりたいが立ち止まらない
寒さからだけ来たのではなく
またさびしいためからでもない
おれはひとりの修羅なのだ


青ぞらにとけのこる月は
やさしく天に咽喉を鳴らし 春は草穂に呆け
うつくしさは消えるぞ


笹の雪が
燃え落ちる 
燃え落ちる


みんな時間のないころのゆめをみてゐるのだ





PS.あなたの南無法華経して、書かれた物語に於いて
   しばし散見される浄土真宗のロジックにあたるとき、私の顔はほころぶのです。


   2015年12月02日(水)  田中恭平より





(注・途中、宮沢賢治心象スケッチ集「春と修羅」の「春と修羅」のスケッチ群より引用し、構成した。 )


 

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