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作品 - 20151109_349_8416p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


サクリファイス

  蛾兆ボルカ

人類の滅亡を
回避するために(だ(と(/思い込んで
/(幻聴に)指示されて)))
そのひとは
裸になり

駅前通りの池(噴水のある)に入って
小石を拾い
(そして)飲み込む
また飲み込む
飲み込む

ひとつ/またひとつ
拾っては/またひとつ拾っては
飲む

「わたしは死ななければならない!」
と、小さな(/とても小さな)声で
そのひとは叫んでいる

苦しくて
口がいっぱいになっても
まだぎゅうぎゅうと
(口に)詰め込んで
モゴモゴと
(とても)小さな声で
そのひとは
(その声はもう誰にも
聞こえない/聞かれない)のに)
叫んでいる

頬が(破れそうに)ふくれて
もう
ひとつの小石も入らないのに
そのひとは
まだ
(小石を)拾う
(((真冬の)駅前の)通りで)

ひとびとは/ひとびとが
それを見ている

誰かが呼んだ救急車が
そのひとを連れ去り
あとには/そのあとには/その日のあとには

ただ
(駅前の(公園の))噴水が
水を噴き上げている
その日から
毎日/毎昼と毎夜

彼女は(街を/駅前を/池を/ )
去ったから

もう
この街の誰も/誰一人
彼女の供犠を/供犠の彼女を
記憶しては
いない(の(だ/だけど))
事実として
人類は
今日も/今日の、昼と夜も
滅びなかった(のだ)

だから
夜の/駅前の/池の
噴水の前に立ち

滅びなかったよ

と、
僕は(今日も)
彼女に報告する




§A.タルコフスキー監督作品『サクリファイス』に寄せて

文学極道

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