歓楽街のガード下に 一艘の舟がおかれている
舷縁まで水が張られた舟の中では
痩せた男がひとり
身を屈めてエラ呼吸をしている
頭上を電車が通り
傍らを通行人が行き交い
車道を車が走る そのたびに
ゆらぐ水舟から
透明な水がこぼれ出る
この水は
蒸発することはない
沈下することもない
この水の通り道は
この世にはない
いまにも破れそうなダンボールの水舟は
エラ呼吸する男をのせて
箱が決壊するまえにくる
洪水を
待っている
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作品 - 20151109_289_8412p
- [佳] 水の箱舟 - 裏階段に腰掛けて (2015-11)
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水の箱舟
裏階段に腰掛けて