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作品 - 20151016_612_8373p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


芸術なんてメッタ刺しでんがな

  泥棒

んあ?
そりゃそうでんがな
草木が風にそよいでまんがな
秋ですやん
秋の小道でんがな
んあ?
枯れ葉が
ざらざらって
音たててますやん
やたらめったら感傷的になりまんがな
ありふれた情景が
ぼんやり浮かびまんがな
そりゃそうでんがな
んあ?
自転車で秋の小道
ぐんぐん
駅から離れて
もう
何もないですやん
人なんて
おりまへん
畑でトマト育ててますやん
おじちゃん
んあ?
おばちゃんですやん
どないやねん
フェイントかいな

ぬぬ、
雨上がりですやん
この町
さっきまで雨降ってたんやな
雲が濁ってまんがな
湿気をおびた土の香りしてはりますやん
めっさええやん
地味でもええやん
めちゃんこ抒情的ですやん
ローファイな町
ほどよく死の香り出てまんがな
暗い感じになってますやん
何もない町
二丁目の角にできたんは
新しい喫茶店でんがな
カフェちゃいまんがな
喫茶店ですやん
地元の方しか
お客さんおれへんやん
入りにくいがな
ぬぬ、
髭の店主が
こだわりの珈琲豆を仕入れてますやん
あれ、どっかの国の限定豆でんがな
さっきから焙煎してまんがな
せやのに
この店
めちゃんこ不味い珈琲ですやん
どないなっとんねん
美味しい珈琲のんで
窓から見える景色をやで
めちゃんこ丁寧に描写してやで
芸術なんて
つまりメッタ刺しでんがな
ぬ、
メッタ刺し日和でんがな
めちゃんこ刺したるで
せやのに
あかんて
なんやねん
この店の珈琲
これで一杯600円かいな
しゃあないな
ほな
お会計
どこ行こかな
ぬっ、
また雨降りそやな
どないしよ
ぬぬ、
もう一回、店入ろ
よし
コーラのも
今度はコーラのも
よし
コーラなら不味いとかないやろ
ぬぬぬ、
コーラないんかい
他に何があるっちゅうねん
ぬあ?
メロンソーダやと
誰がのむねん
おじちゃんとおばちゃんしか
この町
おらんやん
原宿ちゃうねんから
メロンソーダって
考えられへん
ぬぬぬぬ、
あのおじちゃんみたいなおばちゃん
入って来たで
何を頼むねん
ぬぬぬぬぬ、
トマトジュースやと?
メニューにないやん
なんや
裏メニューかいな
てか、あれ、レッドアイでんがな
畑仕事の後に
レッドアイのんでるがな
採れたてのトマト絞って
レッドアイのんでるがな
めちゃんこかっこええやん
てか
おばちゃん
よう見たら
逆に、めんこいやん
何気にストライクゾーンでんがな
良く言えば
大人ボーイッシュですやん
ぬあ?
そんなん
どうでもええねん
水でええわ
とりあえず水くれ
ぬぬぬぬぬぬぬ、
麦茶あんの?
アットホームやな
ええやん
家庭的な喫茶店、ほっこりするやん
(麦茶ひとつお願いしまぁす
これのんで
どえりぁ詩を書いたるで
遠慮せえへん
メッタ刺しやで
ちょうど陽も暮れてまんがな
窓から
ええ感じの西陽が入ってますやん
めちゃんこええ抒情詩
これで書けますやん
ぬぬぬぬぬぬぬぬ、
雨かいな
やっぱ雨降ってきたんかいな

んあ?
この店の雨音めちゃんこええやん
抒情詩でんがな
この感じは抒情詩でんがな
もう何も小細工いらんがな
この感じをやで
このまま書いたらええやん
のんびり書いたらええやん
めちゃんこええやん
窓の向こう
雨の町
広がる畑
あんれ?
自転車
盗まれとるやん
のんびりしてる場合ちゃうで
この町
この店
んあ?
よう見たら
髭の店主
刺青してるがな
ぬあ?
そんなんどうでもええがな
お会計や
ぬぎゃ!
麦茶一杯、500円するんかいっ
ぼったくりですやん
二度と来るかいな
店の名前、何やねん
ぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ、
喫茶飯店。
んあ?
飯店?
喫茶店ちゃうんかい
ほな
ラーメンとかチャーハンとか
あったんかいな
てか
こんなんが
この抒情詩のオチで、ええんかいな
オチには、ちょいと弱いな
てか
オチって何やねん
落語ちゃうで
これ、抒情詩やで
めちゃんこ抒情詩やで
あのな
この際やから言うとくわ
ギャグなんか書いてへんねん
笑わせる気なんてないねん
こちとら抒情詩書いとんねん
詩に興味ない人にもな
今やで、今、
ちゃんと読んでもらえるようにやな
ユーモアをやな
抒情詩にユーモアをやな
ねじ込んでんねん
ぬあ?
いつ読んでもらえんねん
今やろ
わかっとんのか
詩をこねくりまわしてるわけちゃうで
メッタ刺しやで
芸術なんてメッタ刺しでんがな
ほんでな
ホームラン打つねん
覚せい剤は打たんで
どやさ
すべったやろ
あえてすべる技やねん
最近な
あえてすべる技を身につけたんや
ブラックジョークや
どやさどやさ
ぬあ?
あかん
脱線しすぎや
あかん
こんなん絶対あかん
こんなんじゃ
読者が納得してくれへんがな

文学極道

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