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作品 - 20151012_517_8368p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


水色のやつと、パールホワイトのやつ

  蛾兆ボルカ

風邪をひいて数日間寝ていた。まだ熱はひかない。
寝込んでいた間に二つの事(物かもしれない)について重大な発見をしてしまい、発見したことを書きたいと思った。

ひとつは丸い感じの事で、水色だ。私がまったく独自に思い付いたことであり、非常に面白かった。
そこから派生する認識として、
『青いグラデーションが主体となる絵は、人間の肌の色のグラデーションと交錯させると美しい』
ということなどがあった。美学的な面に限らず他にも色々な真理に届いており、「なるほどなあ」と思うことしきりだった。

携帯のメモ帳機能に打ち込んで置こうとしたところ、「大雨乾燥注意報がでています。」という警告が出た。
そうか、と思って諦めた。そんな警告はたぶん無いのだろうから、これは現実ではないのだ。だからメモはとれない。

§ 夢と色に関する註釈
{私はフルカラーの夢しか見ないし、これまでに私が集めた事例では、『自分はカラーの夢を見たことがない』と私に証言した人間は数人しかいない。誰にでも聞くわけではないが、ごくわずかしかいないと思われる。
にも関わらず、『人間はカラーの夢を見ることが有り得ない』、と主張して、私が夢について書くたび色に関する部分をしつこく否定しつづける馬鹿が一人いる。}

ところで、眼が覚めてもその水色で丸い感じのアイデアはまだあったのだった。しかも非常に興味深いアイデアであった。
私はそれについて考えながらトイレに行き、軽い食事をし、さらに外出もして、本屋で数冊の本を買った。
喫茶店でそれを読んでいたら、速回しで時間が過ぎて夜になった。五分間ばかりの体感時間にに2、3時間が流れたようで、外は真っ暗である。
私はゆっくり歩きながら家に帰り、再び寝込んだ。歩きながら、あるとても素敵な真理を思い付いた。それは立方体でスベスベしており、少し柔らかく、パールホワイトだった。

そのパールホワイトの真理から、私は二つの事を導いてみた。
ひとつは、戦争に反対する根元的かつ論理的な理由である。
もうひとつは、性愛についての事実で、性愛を肯定する根元的かつ論理的な理由である。
この二つは、別々になら、様々な原理から導けるが同時にはなかなか難しい。だが、私が見つけた真理からは容易にそれができたのだった。
なんとか帰りついた私は、身体的にはかなり苦しく、時々は数十秒ほど呼吸ができない状態だったが、気持ち的にはリラックスした愉しい気分で眠りについた。

翌朝は少し楽になっていた。眼に見える変化として、鼻水が透明ではなくコバルトグリーンになったし、わかりやすい頭痛がして、わかりやすい悪寒がする。風邪ごときで大袈裟だが、ここまで回復すれば死ぬことはないだろうというところへ来たとも言えなくはない。峠を越えたのだ。

眼を覚ました私は、布団の中でひとつ悟った。
あの丸くて水色のものの大発見は、真理の発見ではなく幻覚だったのだ、と。
それはもはや言語化できないだけではなく、丸くて水色の真理としても明瞭には思い出すことが出来なかった。
しかし、立方体でパールホワイトの真理は、まだ私の中にハッキリと存在していた。
それを使えば、戦争に反対しなければならない理由と、性愛を愚弄してはならない理由を同時に、しかも明快に説明できることに、私はまだ確信をもっていた。

§言語と思考についての註釈
{私は基本的に言語では思考していない。思考の結果の一部を言語で表現するだけだ。}

不思議な感じだった。
私はそのパールホワイトの立方体を、今は未だ言語化に成功していない概念だと思っていた。
もうすぐ、たぶん数時間でできるだろう、と思っていた。
丸くて水色のとは違い、幻覚ではない、と確信していたが、しかし同時に丸くて水色のほうが幻覚であったことは認めていた。そうであればこそ、パールホワイトの立方体が幻覚ではないことは奇蹟的なことに思えた。
そして、しかしながらそのパールホワイトの立方体は、言語化されずに消えていくのだろう、と、心のどこかで認めつつあった。
私は充たされていた。
私の思考の正しさが、あの四角くてパールホワイトな真理により証明されたことに。
しかし同時に、それを間もなく失うであろうことも私は理解していた。

食事をして、少し外出したが、やはりほとんど歩けないのですぐ帰宅して、それから14時間ほど眠った。

眼が覚めたとき、つまりは先程なのだが、私は四角くてパールホワイトの概念も、幻覚であったことを悟った。

それでも私は微笑んでいる。
良い夢を見た、と思うのだ。

ここは夢の世界ではない。だが、夢の世界で何かが証明されたということは、ボンクラ共が思うほど無意味ではないのだ。

私は謳おう。
夢を見ないものどもよ、永遠に呪われよ。
と。

お前たちの手に未来が握られることは永劫に有り得ない。
そんなことは許さない。
お前たちはただ時間の砂浜で
繰り返し滅びるがよい。

と。


パールホワイトの立方体に基づいて、私はそう謳う。

文学極道

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