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作品 - 20150930_166_8334p

  • [優]  警察 - 泥棒  (2015-09)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


警察

  泥棒

雨が降るかもしれない日に
雲を見ていた
駅前で
噴水のない駅前で
雲にしか見えない雲を見ていた
バスは
ロータリーをまわる
ちいさな出来事を
ひとつひとつ
丁寧に確かめながら
ゆっくりロータリーをまわる





携帯電話



が鳴る。




駅から15分
静かに歩く
透明人間みたいに静かに歩く
太陽が挫折して夕暮れになる
耳をすまし
低く流れる不協和音
遮断機
響く
線路沿い
314号室

私は裸になっても裸になった気がしない
1分が90回すぎて
私はまた
駅へ向かう
警察とすれ違う
方向を変えて
図書館へ向かう
小雨が降る
別館AとBの上空
鉛色の雲が止まっている
これは雨ではない
街全体が噴水になる
湿気で
うねる髪を束ね
高層ビルをイメージで絞り上げる
乱用された雑な比喩が
雑に並べられた風景
公園のベンチ
海よりも圧倒的に広い公園のベンチ
カビの生えた詩集
カビの生えた題名のない詩集
一行も読まないまま
夕暮れを読破
それを閉じて
先入観を捨てながら
また雲を見る
雨が降るかもしれない日も
雨が降らないかもしれない日も
同じ日のように
夜空には
画鋲みたいな星
決して画鋲ではない
画鋲みたいな星

夜の駅前では
ちいさかった出来事たちが
おおきな物語となって
さらに巨大化して
街をのみ込む
最終電車が
発狂しながら駅に到着すれば
すべての物語は
最終回に突入して
バスは混雑する
運転手のいないバスは混雑する
警察が
鉄のドーナツをぶら下げて
あらゆる闇を
右から順に捕まえる
私は
左から順に潰していく

自首します
私は透明ではないのです
伏線だらけの街
ほとんど回収できないまま
私は動けなくなった
朝までほとんど動けなくなった

文学極道

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