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作品 - 20150901_509_8284p

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雨上がりの庭で

  


雨上がりの庭で蛇を見ました

小さな頭に長い身体がうねうねと従い
尻尾の先は叢に残されたままでした

頭の先から狂いなく
黒い縦縞模様は編まれているようでした

久しぶりの雨に浴した草花
をかじろうと跳びだしてきたバッタ
を捕まえようと身構えていたカマキリ
をぱくりと飲み込んだ後だったのでしょうか

黒い丸い眼の頭をコンクリートブロックに載せて
実に満足そうでした

私に気がついた蛇はパタンと頭を後ろに投げ
その後を濡れた縞が追ってゆくのでした

頭はどこまで行ったかと百日紅の向こうを覗き込んだ途端
尻尾の先を見失ってしまいました



蛇を見た夜はやはり夢を見るのです


私は

力を奪われ

閉じ込められる

虐げられながらも

次第に力を取り戻し

隙をついて逃げ出し

今にもというところ

しっぽをつかまれて

また閉じ込められ 

力を奪われて

取り戻し

逃げて

何度も


最初は駅のガード下の自販機の前で手首を掴まれ

次には寂れた漁師町の一軒家に閉じ込められ

ある時は暇に飽いた若妻に

または仲の悪い双子の兄弟に見張られ

煤けたアパートの階段を駆け降り

水族館の搬入口で

新興住宅地の空き地で

不安に駆られて後ろを振り返る


こんなにも

力の限り逃げた

から自由になれた

はずだと確信する

手前で ぬらり

忍び込む 疑い

膨れ上がり

漏れ出し

つい

後ろを

振り返る

と必ず待ち受ける 絶望 

嗚呼、やはり 私は逃げられぬ




雨上がりの庭で

黒い丸い眼の頭をコンクリートブロックに載せて
蛇は 実に満足そうでした

突然眠りを妨げられた蛇は
逃げ去る途中の草かげに
トカゲの尻尾をみつけ
迷うことない素早さで呑み込みました
まさか自分の尻尾だなんて
微塵も疑いもせず

そして

消えました

文学極道

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