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作品 - 20150901_481_8279p

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神様のこと

  

さて神様、このお話が面白いか、或いは面白くないかなどについて、わたくしその判断をいただける余地を与えられておりません。故にわたくし、わたくしのできることを精一杯に行為するだけにございます。神様の喜びのみを考え想像し、ここへ生まれ辿り流され漂着したものが今のわたくしにございます。

わたくしは、神様、神様、と口走っておりますが、神様もそれぞれに個性をお持ちになられ、そして生まれ今日までお育ちになっておいでますので、この則を手にした方も、わたくし同様に、わたくしもこの則を手にした方の、神様なのでございます。では、どのように致せば、神様を人括りにすることなく、神様方々に喜んで頂けるか夢想するにあたり、わたくしが思い当たる節をご説明したく存じ上げます。

では、わたくしの出生を説明させて頂きます。「わたしは植物が好きです。」以上にございます。

神様がわたくしに対して、相当以上のご興味を抱いておいでの場合、わたくしの出生についてこと細かくご説明する必要がありましょうが、たいてい神様の出生についてのお話など、犬に純粋な欠伸と退屈を与えてしまうことが常にございます。

それは何故かと申し上げますと、神様がお生まれになり、今日まで生まれ辿り流され漂着しておいでになっていることは、明らかにございます。生まれり辿り流され漂着し、永くもはかない神様の記憶を、すべて同じく日に奉り立てること非常に困難であるからです。

わたくし、わたくし一人では抱えきれない大きな夢を持っています。神様の夢のお話をお聞きする前に、そしてその夢があまりに大きい故に、簡潔に説明することができます。わたくしが死んだ後、夢は生き続けることでしょう。それがわたくしの夢にございます。

さて、神様、神様の夢をお聞きする前に、もうひとつお聞きください。神様、わたくしの場合、その夢の大きさ故、その夢は先にご説明さしあげた夢の一部分にございます。わたくしの周囲にはたくさんの神様がおいでになられます。

そしてわたくしもここへ生まれ辿り流され漂着した一人なのでございますので、わたくしにはその大きな、いえ、偉大な夢を叶える為の役割を配分されております。しかし不思議なことに、その偉大な夢の方から、音沙汰があるわけでなし、分担されたりすることはございません。

わたくしは神様の中の、ここへ生まれ辿り流され漂着したものとして、わたくしの階段を建造いたしますが、それよりもわたくし自身のたったその一段の階段を瞑想する方が、神様の階段を上るよりも難しいことなのでございます。

わたくしが神様の喜びのために、わたくし自身を無くすことができれば、たったその一段の階段を造ること容易なのかもしれませんが、それぞれの神様の喜びを願うほど、それはわたくし自身が、わたくし自身との折り合いに迷うからにございます。

神様、流行の風にお乗りになってはいけません。一段一段、階段を建造するために、今世の河の流水、情緒無く急がしく速すぎます。わたくしは神様が流行の風からお去りになられる姿を知りたくありません。しかし、寂しさが淋しさを啄ばむでなく、清水の滴る静かな山林に寂しさを祠に淋しさを生きることができますが、寂しさとは親しむことができません。

安穏という形のないもの、剣という意味のないものに対して、わたくしは希望を抱き胸に据え、神様やここへ生まれ辿り流され漂着したものがお亡くなりになられても、その偉大な夢は生きつづけます。このどうしようもない喜びの代わりに合わせられた手のひらの中で、暖められた小さな孤独を争いとお呼びしても、お赦しいただけますか?

文学極道

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