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作品 - 20150810_960_8244p

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びくん、ぶぶ

  


スマートフォンが
びくん、びくん、ぶぶ
左手のひらに息づく何かを掬い
柔らかに発光する温かい腹を
人差し指で押して確かめる

びくん、ぶぶ
生きたツールを手中にと
意図された錯覚
省エネモードに変更すれば
大人しくただの道具に戻る
生きることは消費なのだ


年老いた猫が蟹を貪り食った

おいおい、と
甲羅から身を剥がしてやろうとしたら
取り上げられたら俺は死ぬ、
とばかりに抵抗したから
好きなようにさせた

大量に吐いて、次の日死んだ

フローリングに長く伸び
思い出したようにもがいて
びくん、びくん、ぶぶぶ、ぶるる

お取り寄せのタラバ蟹
あんなに貪らなければ
もう一週間は生きたかもしれないけれど
おい、猫よ、贅沢に消費したよな

心臓が動きを止めたら
熱も弾力も失って
お前というかわいい生き物は
別の何かになっちまった

ぺたんこの腹
そっと押しても震えない
皮の袋になっちゃったね

文学極道

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