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作品 - 20150706_198_8176p

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大洪水のあと

  zero

洪水が激しく流れたが
それに先立って激しく流れた風景の束があった
音響が激しく鳴り響いたが
それに先立って激しく鳴り響いた光の板があった
先立つ抽象的な激流によって
地上の生物の本質はすべて抜き取られて
本質無き大地の上を
洪水と音響はただ論証のように滑っただけだ
論証のあとにさらに流れていった私の手指たち
私の指は幾万本となくがれきの墓標となった

何も破壊などされていない
唯一、破壊という現象が破壊された
何も失われてなどいない
唯一、喪失という推移が失われた
静寂と痛みとはまったく同義であり
限りない痛みの原野は限りなく静かである

洪水は生き残った者たちによってその覚醒が同意された
洪水には無根拠な共感が次々と寄せられた
だが洪水はついに真実にはならなかった
激流も音響もすべて虚構だった
あらゆる人間の同意を取り付けても
なお虚構であることに耐えられること
大洪水とは虚構の大水が現実に流れること
そして私はこの大洪水で幾万回と殺され
幾万回と生まれ変わった
すべての地上の生物だった

文学極道

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