街中を
チェーンソウが走る
なだらかな坂を
転げまわるように走る
オイルの残量を
少しだけ気にしながら
身に纏いつくもの
全て切らんばかりに走る
夕刻
知ってるだけの土地を
網羅し終わると
チェーンソウは
乾坤一擲とばかり
茜空へ向けて
跳びあがった
空を切る音は
半径十キロまで響き渡り
あるアパートの住人が
意思表示として
掌ほどの石を投げつけ
それがまた
見事に命中したものだから
チェーンソウは
オイルをまき散らしながら
弧を描いて
落ちていった
ちょうど誰もいない
疏水沿いの植え込みに
チェーンソウは
深く突き刺さった
どう足掻いても抜けないほど
激しい速さだったので
結局それが彼の
墓標となったのです
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選出作品
作品 - 20150205_932_7889p
- [佳] 乾坤一擲 - アルフ・O (2015-02)
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乾坤一擲
アルフ・O