K、魚類のような細長い顔して
遠くから望遠鏡ごしに覗く
都会のリズミカルな生活
ここは徒歩10分
プロフェッショナルな目つき
隣人のY子、ぶるぶるとグラ
マラスにしゃべる
Kのとなりの隙間に挿入されている
Y子、のグラマラス
ふたつの瘤がY子のクオリティ
頭と尻の、転倒したバディ
ここはワンルームの密室
響き渡る沈黙のドラムと洗濯機
疲弊した、食卓の
語り出す、すばらしいリズム
硬直したパン・ティを縫い
縫いまくり、生活の兆候へ
痛ましいことこの上ない
nylonstockingのような人生
「わたしヒタスラに食べ続けてた。三日三晩どこ
ろの話ではないの。そうやって麺状の何か得体の知れない
物質を、二本の棒切れによってひとつびとつ口元に運
びつづけるわたしのことを、道行く人々の視線はさも
おもしろそうにいためつけてくる。ひとつびとつの視
線によって、わたしのこの継ぎ接ぎだらけのみすぼら
しい容姿が、するどい針に縫われるようにして周囲の」
うるさいんじゃぼけ、とKは薄ら笑い
けぱけぱけぱけぱあ
どこか別のところから
浮かんでくる笑い声
すぱい、が潜んでいる
すぱい、を探せ
すぱい、にY子のグラマラスを
差し込むのだ
見つかり次第な
頼んだぞ、不細工な素人
娘たちよ
サウンドチェックはおれ
がする
領収書はおれが切る
すぱい、はリズムのド
ラム、を叩くらしいからな
「景色にねっとりと張り付いていくようだたわ。ラーメン
と呼ばれるあの清潔で文化的な汁物も、こう毎晩毎晩
ひたすらに食べ続けていればいつのまに怪物じみて見
えてくるのもおかしくはないのよ。これがまったく見ず知
らずの怪物ではないとはいえ、不眠不休、ただ食と排
泄を繰り返す人生を送っていれば、ひとつのラーメン」
うるさいん
じゃ、と
うるさいんじゃ、と
うるさいんじゃ、と切実
まないたに包丁をスタンバイ
食文化の悲しみに
ひとしばらくの落涙を
いざ、参らん
と、おもう
いざいざいざいざいざ
ツブ貝でも食ってから
たんすの布団を運びだせ
Y子の阿呆
すぱい、は羽毛布団の中にあり!
あったかいからなあすこは!
と、おもう
「だってわたしを殺すには十分。しかし考えようによ
ってはあまりに当然の事。必死になって食をこなすこ
とに没頭すれば、特急列車に乗るがごとくに死へと直
行できるというもの
。こんなふうに目前の麺を口に
運んだら最後、のべつどこまでも伸びていく一本の麺」
うるさいんじゃうるさいんじゃ、
ってパニックかなこれ
脳くその花園からよりぞろやってくる
アレルギー性のすぱい
見つかってしまった
不治の病のすぱい
東京じゅうから、Y子への賛歌
ハレルヤ、をコピー
世界の平和をすばらし
いリズムのドラムにペースト
「によって、わたしは人生のあるべき方向へ導かれてい
くというよりも、釣り上げられた魚のようにいっぺんに
死の世界へ誘われていくの。そうなればまったくもっ
て耐え難いことなんだけどね、とはいえこれでなかなか難し
いのよ。舌を滑るこの小麦の糸束によってよ、わたしたちは同
時に生かされてすらもいる。そんな罠にわたしたちはは
じめから足首を捉えられてしまっているの。それでい
てその罠はけっしてわたしたちのマトモな視線には見えて
こないから。その足かせはあまねくひとびとを結びつけ」
すぱいがいるぞ!
「て、人一人が動けばみながその一歩に引きずられなく
てはならない有様。これをして人は平等などとよくわ
からない戯言を、いっとう真面目な眼差しでのべつまく
なしに喚き立てるのだから世話ない。へその緒というあ
の愛情で出来たグロテスクな紐を断ち切ることで
、わたしたちはこの世界に晴れて入場できたというのに」
いいか、おれは、はく白状する、ハクジョウスル、ごめんなさいみんなおれが悪いんです、ほんとうにこれはおれのせいなんで勘弁してくださいほんと、おっどろいたのよおれも、まさかね、まさかね、とおもったのよ、もうね、気づいたら遅かったの、とりかえし、つかなかったの、うんじゃった、産んじゃった、まるでだめねおれって、いやになっちゃう、もういちどチャンスをちょうだい、もういちどだけ、いいでしょう、それくらいおねがいよ、あなただってあるでしょう、こうなっちゃうことくらい、ねえ、ほら、さあ、カゾクじゃない、あなたとおれは、ね、そうでしょう、カゾクなんだからこれぐらいねえ、いいわよねえ、そうおもわない、どうしても、そうおもわない、そうなのね、そう、それならいいわよ、わかったわよ、じゃあやっぱり謝るよ、でもねえ、そうじゃないんじゃない、それはおかしいんじゃない、こうやってさあ、ひとがはくじょうする、すべてを認めます、ってまじな態度とろうとしているのに、どうして歩み寄れないわけ、ねえ、おかしいわよね、むしろどうかしてるのはあなたのほうというかのうせいすら浮上してきた感じよね、ねえ、ほんと、ホント今そんな感じになってるとおもうの、ほら、おもうでしょ、おもうわよね、そう、やっぱりおもうわよね、悪いのは、やっぱりおれじゃないじゃない、やっぱりあなたなのよ、やっぱりそういうことなのよ、やっぱりそう、みつけた、やっぱりそうなのよ、わかっちゃった、おまえが、おまえがあれだな、おまえが、
うるさいんじゃうるさいんじゃ、
ってパニックかなこれ
脳くその花園からよりぞろやってくる
アレルギー性のすぱい
見つかってしまった
不治の病のすぱい
東京じゅうから、Y子への賛歌
ハレルヤ、をコピー
世界の平和をすばらし
いリズムのドラムにペースト
けぱけぱけぱけぱけぱあ
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選出作品
作品 - 20150124_759_7869p
- [佳] すぱいはリズムのドラムを叩く - リンネ (2015-01)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
すぱいはリズムのドラムを叩く
リンネ