1
すだれ越しに見えたあなたの顔が
乳白色に沈んだ水際でさ迷い
差し伸べるわたしの片手を地上へと断ち切り
交わす視線交わす言葉もなく
わたしの体表から逸れて行く
こわばった冷光の気配が軋みだし
あなたの皹割れたつま先にあたるから
わたしは庭先に沈んで風化しかけた未熟な夏蜜柑を搾って
オレンジの蜂蜜湯を添えて
あなたの元を去ろうと思う
2
2足の黒いタイツが
幾重にも固く結ばれ
わたしの手が届かぬ先に
影のようにぶら下っていて
走っても走っても追いつけない
藪柑子の実が
辺り一面に散らばっていて
子音をのばしきった幽かな母音が聞こえている
ぃ〜ぃ〜〜
わたしは素足だったなぜ素足なのか分からなかった
3
2日まえ、笹塚の医者が言っていた
時代遅れの男になりたいという歌があったよね
いつも思うんだが、馬鹿なこと言うね。
男はいつでも時代遅れなんだよ、まったく。
女は…と続けようと思うのだが何ひとつ浮かんでこない
無我夢中で風呂の湯をかけ流していた
しぃ〜ぃ〜〜
黐(モチ)の木の街路樹がどこまでも続いていて
近くの景色はいつまでたっても色づく様子はない
わたしは服を脱いでいなかった…
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選出作品
作品 - 20141209_122_7805p
- [佳] 黒いタイツ - あ (2014-12)
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黒いタイツ
あ