人間であることを返却する前に
再び人間となることを予約しておく
すばやい林檎の色に待ち伏せされては
夜道を歩く闇の物思いにかすかに混じっていく
滲んでくる朝と縫い合わされるために
人間であることを浮動させるために
音楽は淋しく走り続け
この渦と地球との和音を引き締め
この岩と人間とのリズムを澄み渡らせる
見慣れた部屋もいつでも滝つぼになりうるし
住み慣れた土地もいつでも異国になりうる
そのような空間の変換にいつでも抵抗できるのは
積み重なる音楽のひねられた掟のみだ
広がりや色がなくても大きく鮮やかであり
都市が衰退し人口が減ってもますます生い茂るのは
死人の生活と希望を当たり前のものにする
時と間を無効にする音楽の静かな停滞のみだ
日が落ちるとき作曲される海がある
事件が起きたとき演奏される法がある
人を愛するとき編曲される自己がある
国が独立するときに録音される軍隊がある
それでも音楽は頑なで誰にも心を開かない
万象が心を閉ざす音が音楽を構成する
地図には載っているけれど行ってみるとそこには存在しない
膨大な哲学が編まれているけれど誰一人理解できていない
全てを根源から洩らしてしまうので却って聴こえない
それが音楽である
最新情報
選出作品
作品 - 20141104_598_7736p
- [優] 音楽 - zero (2014-11)
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音楽
zero