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作品 - 20141023_399_7715p

  • [佳]  訪問 - 破片  (2014-10)

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訪問

  破片


きちんと丈の詰められたジーンズの裾から
生活が侵入してくる
足の向く先すべてに、
ぼくの虚像が立っている
冬至を迎える、その日まで
削り取られるだけの昼を辿っている
ねえ、その丘の上に
夕焼けが落ちてないですか

はじめに心を捏ねまわす
球体の表面を覆う繊毛が
ぼくたちなんだよ
風邪を引けば抜け落ち
痛みと共に血が流れる
目覚まし時計が鳴き喚いて
身体を起こすヒトの朝
窓から見える向かいの家が
恐ろしい速度で焼け崩れていくのを
ぼんやりと見ていられるのが
ぼくたちだ

涸れてしまった夜の鏡面に
支えを求める手は
ずっと虚空を掴んだまま
寝苦しさに開いた眼が
永遠に続くかもしれなかった黒の反射を
引きちぎる一粒の過去を捉えた
夢で見た一切のものを放り出して
明日という日を時の流れで繋ごうとする
最後の一粒を飲み下し
また上に重ねるように
たくさんの錠剤を空いた瓶に詰めるだろう
交錯が終わらないのだから

落としたものを拾い上げるために
つらくても朝、起き出すこと
海も街もそして夕焼けも
ぼくのものではないということ
ぼくたち、という
複数代名詞をつくるのが
ぼくだけだと、いうこと
ここに夕焼けはありませんでした
こま落ちした映像を見ているみたいに
今日が終わった

袖の隙間から手首を伝って
人の命が流れ込んでくる
葉を散らす過程を見せずに木は立ち枯れ
一つの生活が終わろうとしている
ここにはぼくしかいないけれど
うつろう星座の向こう側には
凍えた主格を封じ込めて巡る時代が
すぐそこまでやってきている

文学極道

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