ちいさな森のここそこで
寄りあうみたいに
虫たちが
惜しむように夏をうたう、
そんなふうに
きこえる、
**
目を閉じると
風にそよぐ稲田の青さと
やがて黄金色に輝く稲穂が見える
耕作を止めて久しい
葦と背高泡立草に埋め尽くされた
田圃の跡地で、
*
低い山並に囲まれた
今ではもう人も車も行き交うことのない道の
葦原のずっと向こう
灯るような赤紫色が点在する
広やかな沼地に群生する蓮が
雲ひとつ翳りのない光景に
時の花を咲かせて、
*
見知らぬ場所で車をUターンさせる
道を戻るということは記憶に似ている、と
何となく思う
もう戻れない時間の道筋にいた
誰かを見つけて、
**
そうしていつも
家路につく、
森に息づく夏の日を
秋風が
さらって行って
しまう前に、
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選出作品
作品 - 20140919_030_7661p
- [佳] 夏の断片 - Lisaco (2014-09)
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夏の断片
Lisaco