古い人よ
あなたの残してきた足跡が
時間の湖に一つずつ落ちる音がして
僕はそこに誰にも使われなかった時計の針を見る
新しい村に深く棲み付きながら
あなたの姿は目に見える姿とは別の姿だ
あなたの声はこだまを失って久しい
声には代わりに美しい義務ばかりが返された
権利を自分の手になじむように削って用いていた
古い人よ
どんな微風にでも新しくとがった権利が乗って来て
あなたのまなざしはそれを消化するには繊細すぎる
人との多色の交わりが幾筋もつながっていく中で
あなたの生の表現はその筆触を落ち着かせ
それと同時に柔らかい繊細さを増して行った
僕は新しくも古くもなく
ただあなたを訪れるごとに一つずつ感情が生まれていった
絶対的に古い人よ
相対的な景色に打たれ相対的な人に打たれ
相対的なすべてに真心でもって驚いてきた絶対的に古い人よ
僕はあなたへと至るきざはしを解体しようと思う
あなたに対する債務は徐々に返還していく
もうどんな一個人も絶対的に古くなどならないように
無数の原理と無数の伝統と無数の宗教が
すべて巡り巡って空間に位置を持たないように
すべて反応し合って絶対的な新しさを生まないように
ふたたび古い人よ
あなたの古さは古いままいつまでも生まれ変わっていく
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選出作品
作品 - 20140306_983_7347p
- [優] 古い人 - zero (2014-03)
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古い人
zero