#目次

最新情報


選出作品

作品 - 20140206_411_7298p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


子鳩のコトバ

  やなりり

灰色の空があたり一面に放つ匂いに気付けば
空の只中からすでに幾つかの微小な氷が落ちてきて
地面に着地して消えた、を繰り返しはじめている

水からの状態変化が成す氷→雪へは、緩やかに、汲々として
実写から乖離した、世界の傘の下

傘を打つ音だけが知る、その形状を、傘を外して見上げれば
蠢き急降下する、埃、あるいは、塵

瞼に載った僅かに湿る光の粒に世界は覆われてしまい
途方もなく佇むわたしは飛ばせた子鳩を思う

大きさも不揃いな、空気の層の中から毒素を吸い込んだ
白い羽のよう、と形容されるものの正体は
わたしたちが棄てたものたちで、
羽であるなら、子鳩であろうよ、コバトであろうよ

空の中心点に立ったポールを目印に飛んだはずの塵が
羽化して、降る、フル、ふる、
たくさんの不揃いのコバトが嘴に加えた葉の色も
今日は緑を失い、収束の末期に滅されていく

目印を失った、羽も濡れた、その身を、傘で隠し持ち

二層構造の傘はコバトの留場
音はすべて吸引されて、どこか知らない場所へ遺棄される

天空から傘の丸い円はみつかるだろうか

隣のわたしが、目を瞑り、空を見上げ、ただ流れに沿って
歩いてゆくように見える姿を、描写するコトバよ

巡廻しながら肩から肩へと渡るうちに、
わたしの匂いを掠め取り、空へ放つ、子鳩の
囀りが聞こえたような気がして足元を見ると

小さな影が横切ってゆくのが見えた

文学極道

Copyright © BUNGAKU GOKUDOU. All rights reserved.