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作品 - 20131231_740_7219p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


愛とはからだに投げ込まれた包帯

  村田麻衣子

 
コンビニの駐車場で眠っているとあっちの世
界に連れていかれそうで、いらっしゃいませ
って言われてよかった 有線BGMを聴いて 
悲しい音楽が激しい音楽を、癒すからわたし
歌いながら店先に入ってく。光に迷いこんだ
蝶みたいに心の中で唱えた言葉で誰とも話し
かけられない 飲んだミルクでくらくらする
みたいにからだに撒き散らかし からだの浅
はかなの翳に反比例して。液体は、水族館の
内部みたいに水生動物をはんぶんにして 展
示するかなしみがある固形に鎮められて肌色
に塗り固められた わたしという生臭い自己
があった

変な目立ち方をする若者のファッションショ
ウが始まる。目の前にいるひととおしゃべり
できないから いつも有線の音楽は心地よい
し、いとおしい それなのに触れることがで
きない センスを違えた他人まさに セック
スできない人たちで こころのなかは充たさ
れていた
埋め立てられたアスファルトの下に 希望が
あったでも、得体がしれないわかちあえない 
それに触ることはできない。

胸にふくらみきらないフラスコが胸の中にま
たぶつかって 軋んでしまうから 呼吸がは
やくてくるしそうだし空気が破裂して溺れた
 もう誰か早送りしてくれって心の中にしか
いない 人と話している
 誰 誰 誰もいない内に、朝になりその気
配に負けて冷え切った朝がすごいスピードで
わたしを通り抜けていった

あっちの世界にきみはいる、その曖昧な位置
から飛び降りようと 変な格好をしている 
騒々しい 気配でコンビニのオレンジかグリ
ーンの光に包まれるのは、蝶になったみたい
と肌の色を錯誤するじぶんの事ばかりか じ
ぶんは理解できない対象となり それでもこ
とばでしか扱えないあなたのことを わたし
とすることのない行為でわたしを包むことが
できるのか セックスをしないひとをあいす
ることが生きていく意味なのだ 愛とはから
だに投げ込まれた包帯だ 血塗れになって包
囲されて 言葉で理解されたことだけ 一方
的な表現であった ぐしゃぐしゃのカセット
テープが飛んできて、黒いセンサーは でた
らめな聴覚を愛されて アナウンサーの声は
 愛されていますか 淡々と今年最後の放送
になりますとか、言われるたびにうんざりだ
から


色とりどりのそれを眺めている光に ただれ
そうになりながら、顔についたそれは切り傷
だったり 剥がし切れないティッシュの擦加
傷みたいだった
着ている服をぬがせてやれ、ティッシュで覆
われ 三角巾でつるされるままに浸されるわ
たしたちの水位。たくさんの傷を覆いなおし
て、破れたそれを、後部座席から 助手席を
抱きしめるようにもたれかかり駐車場で待ち
合わせた客にもらったお金をスタッフにわた
し 小銭はもらったことがない札束だけ 子
供のころは、小銭のほうがお金って感じがし
てた 本物を知らずにあつめたおもちゃのコ
インの軽さが気に入って遊んだずっと遊んで
いた そのコインが擦り切れてプラスティッ
クが見
えても使い古びたら、母はほかの遊びもしな
さいって、公園にわたしを放って いなくな
ってしまった

公園のアスファルトは転んだら痛かったでも 
それを誰にも言えなかった 言わなかったん
だ駐車場で目が覚めて映るレジの子のつまん
なそうな顔とか、たまらなくいとおしいとき
が、ありませんか。 温めた方がおいしいで
すと必ず温めてくださいの差に埋められない
 希望みたいなものに埋め尽くされて いま
す そのからだが温かだったとき ヒーター
で温まり過ぎたとき生きているのか死んでい
るかわからない違いを区別され いきてるの
を 明らかにできないよう 会計を済ませた
のに、まだわたしのものにならない感じ
手を停めるレジの彼女の 手持ちぶたさを待
って 沈黙に温め終わるまでの間 「電子レ
ンジ もういいんです 」話したときのはっ
としたような 笑顔。

包囲されているエアコンディションに、愛さ
れてあなたまだ ここにいるね。
わたしまだ 昼休みの常温がわからない 夜
分ここにいる

文学極道

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