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作品 - 20131118_075_7140p

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偏執した批評のような独白

  NORANEKO

躊躇ってる。空中に震える指の先で罅割れる硝子板のような硬い幻触と、幻聴が鼓膜を刺す。沈黙のなかでざわめく奴等がいる。否、沈黙たちがざわめいているんだ。(なぜ、複数形なのかは、直観したとしか言い難い。)顔の半分が痺れて、電気がはしるように時折、筋肉が跳ねる。青い、痙攣の痕跡が、幾筋も皮膚に貼り付いている。これは幻視と、厳密には言えない。触覚の名残が共感覚を介して視覚に残像したにすぎない。……ところで、頭痛よ。君が記憶を食べる一匹の虫でありはしないかと、俺は見積もってるんだが、その、取り引きをしないか。俺の記憶と、君の食欲とを持ち寄って。(その記憶について、俺は語るのを憚る。なぜなら俺は詩人だからだ。私秘性に封をされた言葉を読み手に押し付けるなど、そんな、破廉恥なものを、俺は書かない。)白濁した独白に埋められた声に耳を澄ませながら、俺は手元に連なる書きかけの詩文を読み返して、見た。
















が、ばっくりと、開いてる。(これじゃあまるで自由の刑だな。(うむ、この曖昧さがね、いいんだよ。その、開かれていて、うむ。))この口の前じゃ、さっきの括弧部分みたいに捻れている胸裏の声を詩的にパラフレーズして「見よ、太母の朱火と裂ける陰を!」としたところで、含意の嵐に掻き消えるばかりなのが、丸分かりだろう。(なんだこの、あばずれの、がばがばの、あなのなか!)そう、たとえば俺や、お前たちみたいに。沈黙たちの饒舌なふるまいに、気が狂れて平伏す詩人が今夜、私秘性の高い詩人を叩くのだろうが、それすらも呑み込んでゆく沈黙が、今日も、俺たちの耳の奥を等しく叩く。ほら、詩人、聴こえるだろう? 俺には聴こえるよ。歯軋りや、唸りや、怪鳥の叫びのような、そんな、沈黙たちが、荒び果てて。明けない夜の過客どもの、嵐のような静けさを、聴けよ。

(頭痛よ、俺と、取り引きをしよう。)

藻屑のように青暗い缶詰のなかで、白く、ほろほろと灰が、綻ぶ。浄火に明るく崩れてく、俺の詩行の群れの、一匹、一匹を、舞い上げる励起。灰は温もりの河を昇り、呪詛は月の光に入るのか。俺にすら赦されない彼岸で咲くか。誰の手からも離れて、読まれることも、書かれることも、もはやないのか。窓のなかで霞み、幽かにくゆる、月の繭。あの光が洩れているのは、やはり穴? 天地を反転された黄泉路のそれか? なあ月よ。黄金の、洩れだす穴よ。お前のがばがばのその口で、咥えてよ。俺の言葉を。お前のざらざらの歯で噛めよ。下弦の夜に裂け目と冴える歯列で咀嚼してくれよ。咀嚼する、幻聴がした。ように錯誤させる、木々のざわめきに産毛が逆立って、喉を鳴らす、鎌鼬。

文学極道

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