#目次

最新情報


選出作品

作品 - 20131021_692_7085p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


ガードレール

  村田麻衣子

オルガンの鎮静を始めますが ちょうどいいボリウムが、 わからない
からあ あ 通る声 は拡声器で顔が覆われて誰だか わからないけれ
ど笑って迷子のお知らせをするまえに 買い物をしないと 笑って 神
経がばらばらに剥かれ る料理を始めた午後になった、あたりから ね
え 魚をペーストに してあげた 助詞を なくして」 つなぎあわた
ら あ あ ああなたにはしてほしく ないことばかり あるで だか
らあなたのからだがだめにされる前には 冷めようがあたたまろうが 
どうでもよかった

たべさせられる フードプロセッサーで砕かれた骨 はあなたの裸を憶
いださせてくれる湿度と匂いといなくなってから咲いたベランダのヒヤ
シンスの事を まだ常温であたたかいけれどだんだん冷たくなるんでし
ょう外気の影響を受けやすいから、彼は気候を気にしているその影響で
わたしはテレビをつけて天気予報の放送を流してやっと 眠りについた

あらかじめ笑っているマネキンが 手首をわたしにくれたからわたしは
抱きしめてあげた して欲しいことがわからない わたしのからだのほ
うにかなしみがたまりつづけていった 誤って変換されてそれは、あな
たに対して怒っていたり、笑っていたりそうね、愛している、というの
だけが違った感情の流れにはっとするからすべてを包みこんで 手首を
遠くにやらないようにからだに縛りつけてあげた 救急車のサイレンが
騒々しくてたまらない あなたは切断された手首だけを見つめていたか
ら かんかくのすべてを麻痺させないといけなかった

迷子のお知らせをします

記憶のなかのあなたとわたしの知らないあなたをつなぎあわせる 対象
を失ったきのうのわたしからそうして迷子だらけが生まれたんだ スー
パーマーケットはの駐車場は夜の 教会の室内を、破壊したみたい 
やさしさにはモザイクをかけてまじまじ眺めて 朗らかな風すら 常温
を上昇し続ける くちうつしで甘みを映しとるエアコンディション 鼓
動を左側から開放されていて鋭利につきささるほど 交通整理のコーン
がばらばらになっていた プールサイド 水中に顔をおしつけたら目が
痛くて見えないものが見えるみたいアスファルトは色彩を濁らせ、かた
くてやわらかい

目をあけてたら目が痛くて 洩れた声を遠くに感じた しゃべる声より
吐息がまじって呼吸みたい
聖書が読めないわたしたちは感情を離脱して しゃべっている。
マイゴノオシラセヲシマス

感情を離脱したような話し方をする あなたは、アナウンス通りに行動
するわたしが 嫌いだったんでしょう好きで堪らなかったんでしょうオ
ルガンが鳴ってからわたしは
迷子の子供たちを順番にならべて番号をつける
顔のないそのこたちが帰れるように家に暗幕を張っていたら
部屋は海みたいに 漣のBGMをザーザー振りの、雨の音が
そこに帰っていいのとわたしに問いかけ、放送様の口調で帰っ
ていいよという
寄り添うことを否定された誰かを否定してやっと
わたしは懐かしさを否定して抱いた悲しみと新しい感情を
あの頃にもどることはできないけれど、必ずここに帰って来るから

ただしい 反応が もたらせれず かなしいのに笑ったり、怒りたい
のにかなしそうな顔をして疲れきっているせいにするけれどそれは、
疲労に左右されて、中二階にある植え込みの色彩ごとに鎮静をかけ深
いところの色にやっと届くから駐車場にやけに響いてしまう
表情の乏しい女性 ランウェイで歩く距離より遠くにいけない 悲し
みがあらゆる角度から押し寄せてきたのを、敏感に感じて彼女は睨み
つけたファッションショウ。浮遊力が足元にあってね、それが嘘みた
いな生きている感覚を、じゅうりょくをさかさにしてそうね、生きて
いるというのは自分自身への命令に過ぎないんだわ

泣くことで肯定していた。ちからいっぱいなくと目が腫れて 顔中か
ら液体が流れていたかなしんだとしてもうつくしくもなんともない 
それをまた考えていたら 交通整理のネオンライトをもっているひと
が いつもと違うひとだったようにも見えて安心してわたしは、対象
をもたないから迷いこんだ色彩や熱線に 力を奪われて眠る
国道に抜けていく私道から、その色に支えられても ガードレールの
白さには伝わないように
家に帰っていった

文学極道

Copyright © BUNGAKU GOKUDOU. All rights reserved.