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作品 - 20130911_990_7025p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


黄色い紙で種を包んで

  深街ゆか


わたしどこまでも祖母を踏みたい


ラベンダー色の瘡蓋を剥がしたら
鮮血が滲み出して、こんな真夜中に
顔も知らない先祖の末裔であることを
知らされる、黄色い紙で知らされる
その紙で傷口をふさいだら
先祖の顔に血をぬることになるんだろうか
黄色い紙に付いた血液はやがて
わたしの子孫へのメッセージになる


墓に造花のガーベラを手向けたら
祖母は眉間に皺を寄せた
怒りを表す地上絵
ガーベラの花言葉で緩和する
造花の半永久的いのち
祖母は造花のガーベラを押しやるように
生きたクロッカスを手向けた
かわいいだけの踏みやすい花だ
わたしに背を向けた祖母の
首すじの疣が花開いてる
この花に誰かが
インチキな花言葉を与えるまえに
わたしはそれを摘んでポケットにしまった


種を撒き散らすまえに摘まれた花の美しさに興奮する
庭や道や河辺で恥ずかしげもなく
開花したやつらの透明遺伝子
張り巡らされた電話線と
繋がっている感じ
繋ぎ止められている感じ
そこから突きつけられる黄色い紙


やっぱりわたし、どこまでも祖母を踏みたい


ぺしゃんこになるまで踏んで
彼女が子宮を持たずに生まれたこと、踏みつぶして
一切と繋がっていない花言葉を与えたい

文学極道

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