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作品 - 20130909_946_7021p

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ノルウェーの猫

  


家の軒先から猫があらわれるたび人間たちが押し寄せ、ふさふさとした金色の毛にくるまれた四肢を撫でまわすかとおもえば、膝の上へ抱きあげふっくらまるい身をあやすように湿る鼻頭に頬擦りを繰りかえす、あるいはマタタビをちらつかせ喉元へ一斉にマイクを立てるなど、嬉々として騒ぎだす。しばらくすると猫は喧騒の中するりぬけゆったりした足取りで歩をすすめ、地にだらり横たわり人間たちへちらと眼をなげあくびする。猫については昼夜様々に飛び交っていて、たとえば、よく晴れた春の日にお向いの塀をよじのぼり太陽をころがしていた、しきりに雲をかきむしっているうちねむりこんでしまった、ぽつぽつと雨降りの日に銀髭を弾く雨粒の一粒一粒へ耳をそばたててないていた、夕空にうっすら架かる虹を舌先でちろちろなめあげ肩口へなでつけながらきえた、など。家主によるとノルウェーの道中で足元をうろついていた野良であり、いざ連れ帰ってはみたもののニャーニャーなくばかりで好きにさせている、また、ある日の深夜に突如魚をくわえたまま窓の庇をけりあげとびさっていき、尾っぽをぢりぢりかがやかせて隣町のビルの谷間へ無数の白い線条をひいておちていくのを見た、とも。

文学極道

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