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作品 - 20130725_569_6971p

  • [優]  commercial - 村田麻衣子  (2013-07)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


commercial

  村田麻衣子

食べる≠吐くであると、それは賑やかな孤独から見つけ出す ややくすんだ光のようで
郊外のコンビニから漏れ出している 駐車場に宛てられているコマーシャル的なネオン
ライトは 消費される欲望から消費する欲望へと変換されるたびに書き殴られた文字ら
しくにじんで アスファルトの上に散らばった個包装たち。運命を弄びすれ違う人たち
がこんな時間まで起きている事に 安堵し 巡る運命または転がり続け その人たちと
目が合い逸らされるたびに周期的に涙を流す日はそう遠くないのだと予感している。並
べられた雑誌のページには死んだ虫が 潰れたままうごめいていて悲しかった 時計を
眺めてみたが、目がかすんでよく見えなかった。
運転席から見た雨と写真を見比べて、いつか会った彼と彼女を蘇らせ。その影響につい
て、感じながら運転席で膝を抱えてみた 誰かを思う隙はなかった聴衆的には美しいも
のを、「美しい。」そう叫びそれを匿名化してまで 聴衆でいたかったのはどうしてだ
ろう。

わたしはそれを食べる=吐くであると それをソロプロジェクトだと費やしたものは、
時間と身体的消耗。ファッション誌には書かれていない 残響室の騒音で温もりある胎
児の大動脈を身体測定して それを嘔吐する商業的な行為。単純に退屈がやってくる
もしくは、目の前の景色を過剰に感じて酸味の強い柑橘の果実を半分切って からだに
流し込み そのはんぶんをルーズリーフの書きかけの記事に乗っけたまま 仕事に出か
けた。冷蔵庫は、きらいだった あるいは好きだった 
そしてわたしはそのマイナスへ振り切れたエアコンディションを 
半強制的な行動すべてを
からだを流れ出す冷たい水滴を
常温での過呼吸は常軌を逸している。誰のゼリーかわからないまま溶けだしたその果実
を見て。その強迫のスピードを感傷的に言うと、愛していた。

多目的トイレに駆け込んで吐こうとしたら雨の雑踏から 男女がそのビルの1階の一角
に駆け込み、男が女の手を引くようにして入って行った。入ったことがあるトイレの個
室はやたら、広かった記憶が蘇る でも一人でこんなところに立たされている 気分っ
たらなくて わたしはその扉を思いっきり蹴った。
センター街の路上では、店内BGMが漏れ出して、イントロダクションからそれはもう聴
けたもんじゃないのに 2つの店舗から融合してダブルイントロとなり あんたたちの
主題歌みたいだって。沸々としていたからか、肌蹴たウィンドブレーカーの下にはなに
も着ていなくて
首にかけてたヘッドホンから深夜 周波数を合わせないで録音した ノイズが流れっぱ
なしだと気づいてはっとする 目の前の景色はわたしが経験した夜の浅ましい記憶より
もずっと現実的で優しかった

明け方は、闇を争いながらかき消すそのグランジの始動みたいに 扉から出てきた彼女
はサンローランのクリエイティブディレクターに就任したばかりのエディスリマンの20
12秋冬コレクションを身につけ その清楚な顔立ちを狂わせながらワンピースは肌蹴す
ぎていて 男の子に借りたかのような クラブ帰りのシャツを身につけて わたしの顔
見て顔を赤らめ走って どこかに帰ったのだろう。

彼とわたしは残されて、タイル張りの多目的トイレはやたら寒々しく冷気を放ち、ギタ
ーケースを担いだ彼は薄着でシンプルな白シャツにディオールのパンツらしきものを身
つけて 色白の笑顔が不潔だと思っていたら、漂白剤がまかれた室内で彼は眠りだした
。わたしもそこに横たわっていたら、ケースから腐食したフローズンバナナを取り出し
てわたしにくれた。数字的に期限切れなわたしたちの接点は 感傷に無神経だった頃の
わたしと時間軸をあわせ そう 融合させる=いとおしい とはさらに違っていると理
解するまでかなしかった 気分的に不潔なのでわたしは服を着たまま この部屋のベビ
ーベッドと一緒で セックスはわたしたちにとって対象外だった

これらの鮮度がたまらなくいとおしいのは中指にも親指にも耐えられなかったから。嫌
いではなかったけれど彼は、はんぶんの約束でわたしにくれた。はんぶんはとっておく
ようにわたしにただ渡した
プールの外に溢れているオーバーフロートに紛れた双生児みたいに触媒は穏やかな空気
に接しながら溺れている

「こんな場所で迷子になったらいけないよ。腕も、首も、太腿の内側もこんなにうつく
しいのだから。」
「うん。わたしは、帰ってこれを冷蔵庫にしまうの。だから、さよなら。」
「ママに食べられないようにね。」
「そうね。」

ソウダネ
わたしが呟いたのは添い寝から経過した3日間。蝉はうつぶせで死にかけ新たなニュー
スソースとなる。それをモデルにしたチョコレートが発売されたという斬新で美しい事
実を耳にする。北欧では希少らしい彼らの騒々しさは あの時のわたしのかなめになっ
て夏日をたちのぼらせ 今日からの始動らしきテーマソングとなりうる スピーカーの
前で眠った記憶 それは、紛れもなく彼の影響だった 気候に左右され 気が振れてい
く神経を静める高らかに そうして静寂へと帰って行った。

文学極道

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