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作品 - 20130629_300_6935p

  • [佳]   - ゼッケン  (2013-06)

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  ゼッケン

おれの正面に出てきた男は痩せて背が高く、白いワイシャツ姿で恰好のいい太い黒ぶちのメガネをかけ、
髪の毛も呼吸も乱れていなかった、そして軍刀を抜く
男より背が低く腹も出たおれはいやらしい笑顔を浮かべて男を迎えた、砂を撒かれたアリーナの真ん中でおれは
釘打ち機を右手に持って立っていた、釘打ち機はしなやかな強いホースで地面のエアコンプレッサとつながっていた
圧縮空気の力で長さ5センチの釘を瞬時に打ち込もうというのだった
ふだんは洒落たシャツを着る男がアリーナでは無趣味な白いワイシャツ姿なのは釘を打ち込まれた箇所に咲く赤い滲みが映えるからだろう

男も慣れているわけだ

男もおれもこの手のイベントでは神シロウトの類だった、おまえたち、苦痛はお嫌いか?
左の前額部から釘の頭を生やした男がおれの首を圧し切ろうと鈍った軍刀を上から押し当ててくる
おれは必死に抗い、刃を素手で掴んで押し返そうとする、男が不意に軍刀を引いておれの手のひらはぱっくりと裂ける
勢いあまって尻餅をついた男の顔面、投げつけようと地面からエアコンプレッサを持ち上げたおれの腹を軍刀が刺し貫き、
おれはコンプレッサーを頭上に掲げたまま前進した、なぜなら、ここがおれの一番の見せ場になるのがおれには分かっていたからだ、
おれはおえええと吐いた
背中に抜けた刀身には血と脂の筋が絡み付いているだろう、それはおれが足を一歩踏み出すたびにさらにぎらりと光るはずだ、

カメラ

輝き

尻餅をついた男の顔面にコンプレッサを落とす、男はとっさにおれに向かってしがみつく、コンプレッサーは男の背中を打って地面に転がって男が呻く
おれは釘打ち機とコンプレッサをつなぐホースを男の首に巻きつける、2回巻いて力を込めて引っ張った、
手のひらから溢れた血でホースがすべった、もう、あとはいいだろう、観客も飽きている、観客は2分で飽きるのだ
食後のコーヒーが出てきていいタイミングだったが、ファミリーレストランでは食事終了と同時にコーヒーを飲むためにはおれは
食事が終わる前に手を挙げていなければならない、これから左の前頭葉に釘を打ち込まれた男と腹を串刺しにされたおれは
集積した情報の自重によって発火する図書館について話し合いたかった、それは検索エンジンでもなくまとめサイトでもなく、
暇をつぶすためではなく、暇と同義であるような、それがあるならどのような演算理論が図書館に存在せねばならないのかをトークしたかった
初夏の図書館に接続された少女たち 抜かれた本 ビット列

文学極道

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