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作品 - 20130311_589_6767p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


ふみ子は土葬にして

  深街ゆか


ちょっと、
にぎったら
つぶれて
砂になった、それは
ふみ子の
身体をささえていた
したから18個目の椎骨、
わたしの指と指の
あいだをすりぬけて
ハクモクレンの
季節に消えた



ふみ子が死んで
2日めの朝
ふみ子の母と
わたしは
ふみ子を解体した
ひとつの頭、
にほんの腕、
にほんの脚、
それから胴体、
肉や骨が詰め込まれた
ふみ子のそれらは
頭上にひろがる青天よりも
圧倒的に広い
世界を内蔵してるから、
どこまでも続く
掴むことができない


(わたし、うまれてから
  わたしいがいのだれかのもので
 たのしいことなんてひとつもなかった。
  うすいようでぶあつい皮膚を
 つまみあげるとあらわれる
  皮膚と肉のあいだの
 わたしそこにいるから、いつだって
  きりきざまれずに火葬されたら
 そこで、わたし、消滅するんかな、)


ふみ子の仕組み
ふみ子の具体性
蓄積された喧騒
昼と夜の、退屈とか
ひとつひとつ
ガーゼで包んで
中庭に植えられた
ハクモクレンのとなり、
そこにまとめて埋葬して
手向けたのは造花
枯れないって
良いことと思えないけど、



ハクモクレンの季節になると
ふみ子という名前の女の子が
白い花びらを摘み取り
千切ってばらばらにして
遊んでいたことをおもいだす。
ハクモクレンみたいな
白いスカートをひらひらさせて
(たのしいことなんてひとつもない
(そこで、わたし、消滅するんかな
と言ってばかみたいに笑った、
ふみ子の
醜い歯並び
その向こうの青天
そこでわたしは、ふみ子を解体した。

文学極道

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