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作品 - 20130114_976_6628p

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車窓の詩

  安部孝作


車窓はいまだ固まらず
七三キロにえぐられる
ぐにゃりぐにゃりと 鐘がなり 
平たく 延び縮みした思いが
頭をぶちつけ 眼より飛ぶ
まどろみからはみ出す黒枝の
茂みの青い光をかきむしる

車窓は細かく毛羽立って
黄色い鉄路のひまつは
綿毛となって風塵と舞い
過ぎゆく景色に垂らされて
朱色の長手が放していく
黙読の、カラリとした声
カラリ カラカラ、懶惰な響き 

強引に 運ばれる絵筆が、こすれ、
繊維の粉末が薄く積もった
透き通る耳が砕け落ち
燦爛とした――
電車の揺れに合わせ
翻る、陽光がつり革を潜り
空いた座席に影を踏む

隣で幼子が視線を流し
純白のゴムが伸びきって切れ
頭の環が気だるげに揺れた
烏のたかる家屋の瓦が
てかてか融けかけ、
蛹が黒々と腫れ上がると
ソーラー発電は頂点を迎える

車窓は私のせいで皹だらけで
小さな色彩環の瞳を浮かべ
赤、視界は占められ、
そこに青、落とされて広がり
一番星が鈴の音立てて消え
次の一番星も殻砕き
泡沫立てて消えさった、

そうして一番星はみな消える
もう現れるものはない
待つ人を裏切る流星は
稜線の架橋を横切って
ぐしゃり一挙に崩落させる
つま先から踏み出した 月影の足元で
地につく私の 膝のはるか彼方で

文学極道

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