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作品 - 20120917_152_6344p

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カフェイン

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 殴打する中空に指を二本立てたら銀河の果てまですべてはピースだから、水中眼鏡かけて、太陽の目を潰して、苦くて冷めきったブラックコーヒーで夜を水没させる肉体労働をしようよ。喫水線がシンデレラの膝下にとどいてしまったら、かぼちゃの馬車は砂糖で煮詰められ、鍋からロバが逃げ出すとファンファーレが鳴り響く。万馬券を握りしめた僕らのこぶしがささやかに解かれたとき、ガラスの靴を履く夢を見た少女のベッドの下には、口の中のビスケットみたいに、朝が溶けだしている。少女が寝返りをうった寝具は昨夜まで争いなんて知らない地形のように整えられていたはずなのに、いまではすっかり焼け野原で、カーテンの隙間から射しこまれる異国のスラングが、少女のおはよう、になりすまし、こんにちは、で接吻し、おやすみ、で婚約している。そして、くすくす笑いあう六月に招待状がとどいたら、僕らそれを見て争いを猿と蟹だけに任せたことを後悔し、嘆きながら、いちばんの正装に着替えて文鳥のように仄かに赤い唇を尖らせ、おぼえたての祝婚歌を精一杯にさえずるんだ。

 ひと粒のこらず古米を啄ばみながら歩いていった公園。町の隅っこに留められたホッチキスみたいな鉄棒。僕はそれを思いきりつかんで日暮れまで逆上がりをした。鳥かごの中で狂った文鳥みたいだ。って笑われても、何度も地面を蹴って何度もひっくり返ってた。お箸もつかめないほど弱ってしまった手の平をゆっくり開くと、そこには世界地図が広がっていて、いくら眺めても歩けない街や、泳げない海の美しい名前が書かれているばかりで、誰ひとり握手を求める人なんていなかった。僕は豆腐の角が崩れるときの音を聞いた。近くのベンチには髪とひげを伸ばした空腹のグルメ家が夜空を見上げながら顎まで伸ばして「夜中に食べる銀河は驚くほどうまい。」そう言って、口の周りを光であふれさせながら笑っていた。僕は、本当はすぐにでも肉刺だらけの手の平は新しい大陸ができたみたいだって誰かに伝えたかったけれど、痛みを見せることはじゃんけんみたいにこぶしを振り上げることと一緒なんだって、まだ少女だった頃の君が教えてくれたから、今夜もありったけのお湯を沸かそうと思うんだ。飼い犬の背中を撫でながら、僕は今夜、濾過されてゆく。カフェインの成分も知らずに。今夜、僕は。

文学極道

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