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作品 - 20120914_097_6340p

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独り言

  

俺の親父ってのが酷い奴でよ、酒と煙草と女と博打と暴力の全部で確立変動おこしてやがって、中学の頃かな、俺の預金通帳勝手に作りやがってそのまま親父の会社の下請けで労働フィーバー、笑っちゃうよね、おふくろは頭がパーだから、毎日弁当よこしながら笑顔で「がんばって」と毎朝毎朝、すれ違う小学生の頃の同級生だとか、好きだった女の子だとか、俺の作務衣見て何を思ったんだろうな、なぁ、中学生並みの世界ってあるじゃん?多分、映画で見たような、まだ自分が世界の中心にいて、笑ったりすることが許される類の、消しゴムのカスをさらっと机の上から払いのける類の、なぁ、君がいてくれなかったら俺は居場所なんて一生無いんだと勘違いしたかもしれない、君は俺に逃げ場をくれた、ギターをくれた、参考書をくれた、覚醒剤をくれた、「愛してる」って言葉をくれた、愛してる、多分俺も、確かに今もたまに蛍が光る綺麗な池のほとりで君に宛てた言葉を繰り返し繰り返し喚くこともある、「真っ当に生きて私を幸せにして」って言葉は今でも俺を支えながら縛っているんだ、君がその言葉を自分のためにかそれとも俺のためにか、どういう意図で言ったのかはもういまさらどうだっていい、俺は君のおかげか、君の残酷な慈悲のためか、ゆっくりと歩き始めた、いつだか、道路に引かれた白線をたどって海まで行こうって言ったあのときの笑顔が俺をいつまでもこの白線に戻らせるし、君がいなくなったこの世でも俺はいつでも君の隣を歩いている。なぁそれからだよ、糞みたいな生活が始まって、廊下を歩けば唾を吐きかけられて、あの人がくれた参考書は校庭の真ん中で燃えていた、あああ、それとは別問題かな、授業中誰彼かまわず俺を呼ぶんだわ、名前だけ、たまに憎悪の言葉、「ねえねえよしき?お前の背中に」ああ、わかってるよ、わかってる、何もかもわかってるって気付いたのは、救急車の中?もうちょっと後だったか、医者がリスパダールって薬を処方した瞬間か、ごめんよ、少しだけ遅れるかもしれない、あの人に伝えて、いつか俺も海まで辿り着くからって、そう思ったのは先輩の三十路の彼氏の家の中で二人でギターを弾きながら、歌いながら、スリーピー・ジョン・エステスをさ、やっぱ駄目らしいわ、高校とか、セックスのほうが何万倍も気持ちいいから、わるい、少し遅れる、ところで君のえげつないブルースを聞いて俺はどうやら嬉しかったみたいだ、堕胎手術を今まで3回、それも全部自分の父親の種だって、笑える、あ、プラネタリウム行きたいね、そんで星のことなんてどうでもいいから君の身体をずっと触っていたい、夜はいつだって綺麗だ、かなしい言葉が全部とうめいになって消えて行ってくれるから、今度の君はとてつもなく現世的な翼に乗ってロンドンに行った、なぁ、知っているかい?君が好きだった窒息プレイの最中に俺が何度でもこのままほんとうの翼を手に入れたいと思っていたこと、もっと強く締めてよかったのに、俺はあのあと高校卒業したんだわ、嘘かと思うだろ?模試の全国平均が70越えててさ、単位足りなかったけどうちの高校創立以来始めての旧帝っつーことでどーにかなった、あの人がくれた金を軍資金にして、俺はまた白線の上に立って、どっちの方向にあの人が消えていったのかもう分からなくなって。それで通い始めた大学は予想通り糞で、とりあえず山塚アイに会いたくなって東京行った、わるい、また遠回り、というかもうどうでもいいや、もうずっと前からなんとなく、なんとなくだけど気付いてるんだよね、誰も俺のことなんて待ってやしないし、海なんてどこにもない、適当にバンド組んでさ、なんていうの?ロックでもないしブルースでもないし、ああ、ライブハウス壊す系?それそれ、かなしかったのはさ、バンドメンバー全員で一緒の部屋に住んでたんだけど、全員で貯めた家賃と食費と光熱費と雑費、全部、おんまさんに乗せてみたら、あいつ上がり3ハロン普段よりも3秒も遅く走りやがって、ああああ、そういうことじゃない、俺が誰の子供かってことがさ、そんで追放、馬鹿じゃねぇのか、お前らバンドやってんだろ?だったら許せよ、ジーザスクライストの要領で許せよ、馬鹿じゃねぇの俺、そんで全員死にやがれ、って電話したら、横浜のパチンコ屋で住み込みで働いてた彼女は、ありったけの愛情をこめて、電話を切りやがった、笑える、君のこと結構好きだった、バンド辞めてまじめに働くからいつか一緒に暮らそうって言ってた矢先に飯場の環境に耐え切れなくなって逃げ出した俺みたいな甲斐性なしのクズにはお誂え向きってやつ、煙草ってやっぱ体力無くなるのな、雲の切れ目、さようなら、さようならとーきょー、ばいばい君たち、俺を指し示してくれた君たち、俺の先を指し示してくださったビッチたち、この糞と汚物のミルフィーユみたいな世界に刳り貫いた乳首でできた首飾りをかけてあげよう。なぁ、あの人の指し示した白線はいつの間にか10tトラックのブレーキ跡で消えちゃったみたい、ああ、分かってる、あとはあの人がくれなかった翼を、拵えて、ああ、そのまえに殺しておかないといけない奴がいたな、と思ったらそいつは女と博打のダブルリーチで失踪中、ついてないな、出来れば鈍器がいい、すぐに死ねないから、ああ、俺は楽にいきたいね、親父の話さ、そういえば話すのを忘れてたな、父親が自称画家の先物トレーダーで躁うつ病のクズ、母親は失踪中、高校の頃知り合ったんだ、彼女は一言でいっちゃえばブス、制服の隙間から10日前の体育の授業の汗のにおいを発散させていた、俺が玉砕した多分金平糖一袋よりも多い女の子のうちの1人なんだけど、君のこと話すのを忘れていたよ、君の実家と俺の実家は近くて、俺がフルメタルジャケットで実家帰りしたのに、ハートマン軍曹がいなくて途方にくれてて、とりあえず酒でも飲むかって向かったスーパーで社員として働いていた、初めて知ったよ、君が考古学なんてやってたとか、シルクロードを何度も歩いたんだってな、砂漠の夜に瞬く星の話しをしてくれよ、砂漠の夜も三たび微笑むのかい?俺には三たび微笑んだ後、ふぁっく・ゆーっていう星座になってぐるぐる回っていつのまにか馬鹿にするようなすずめの囀りがふけみたいに降り注いでいるよ、それから砂漠の見えない道をふたりで歩く、なんてことはなくってさ、玉砕、たとえば君はその絹の白い道を歩き続けることはしなかったのかい?こんなスーパーで白髪ばばあをあの道に譬えたりしたのかい?その白線の先に何を見ていたんだい?俺とばっくれる誘いを断ってさ、何も示してくれなかった、シルクロードが夜に輝く乳の川になってあらゆる星がそこに落ちてきてきらきら光る、君は白線を歩いていた、俺は。きっとどこにもいけない、その絹の道にしたって俺の白線にしたって、どっちみちどこにも辿り着けないように出来ているんだよ、って君に話した時、君が言った「わたしがどこかに行っちゃったら誰がお父さんの面倒を見るの?」
シルクロードって相当やばいらしいね、あ、放射線的な意味で、あの人は甲状腺癌で死んだよ、砂漠の夜は一瞬で、きる・ゆーって星座になったってこと、あの人があの時言った言葉が何度もわたしに反響する、なぁ、かなしみってなんだろう、わたしは幾重にも重なった白い道の上でいつまでも佇んでいたんだね、あの人に一つだけ聞きたい、ダルビッシュは今年何勝するかな?じゃない、愛を

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