うすむらさきの雲の向こうで
夕日がしずむ
水羊羹の表面を
スプーンですくうように
なめらかな冷たさを泳ぐ
信号機が ぱっぽう、と
くりかえし諳んじて
歩道橋はひとの重みにたわむ
みんな きちんと弁えている
(お前はえらいね)
(と、そこにはいない野良猫に呟く)
かつて
湖のほとりで
生まれたものがあった
腕のうちがわの
いつだってしろい部分が覚えている
ねむらない夜は
寝返りをうつたびに
短くなる
紫陽花のリースを
たいせつな人のために買った
帰り道
どうしようもなく鼻歌があふれて
かろかろと
空色の
前庭にちかい場所で
まわり続ける
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選出作品
作品 - 20120829_793_6303p
- [佳] はるか - 津島ことこ (2012-08)
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はるか
津島ことこ